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短時間作用型β2刺激薬(SABA)を過剰に使用すると、喘息の増悪(発作)および死亡リスクが上昇する(ERJ誌からの報告)

喘息の治療薬として最も古くから使用されている吸入薬として、短時間作用型β2刺激薬(SABA:Short Acting Beta2 Agonist)があります。メプチン®、サルタノール®、ベロテック®などの商品名として販売されています。

 

SABAは使用実感と効果感に優れており、使用すると数分で効果が実感できる薬です。喘息患者さんは24時間ずっと症状があるわけではなく、朝起きたとき、風邪をひいたとき、季節の変わり目など、症状のでやすい時間帯、時期があります。症状がでたときに薬を使って数分で楽になった後、しばらく症状がないのであればその薬だけでいいのではないかと思ってしまいます。

 

しかし、SABAは使いすぎると危険な薬です。毎朝や毎週のように定期的に使うべきではありません。

 

今回紹介するSABINA研究は、スウェーデンで行われたSABA過剰使用に関する大規模な調査です。

35万人以上の喘息患者を対象としたこの調査では、喘息患者の3分の1でSABAが過剰に使用されていた報告しています。そして、SABAの過剰使用により死亡リスクが増加していました。ここでいう過剰使用の定義は、1年間でSABA吸入器を2缶以上、つまりSABAを週に2回以上、年間を通して使用することとしています。

 

 

 

SABINA研究が掲載されているERJ誌のEditorialにおいて、Jeremy Charriot等は以下のように述べています(Asthma rescue treatments, time to reboot: European Respiratory Journal 2020 55: 2000542; DOI: 10.1183/13993003.00542-2020)。

 

“SABAとOCS(経口ステロイド薬)は、喘息発作のレスキューとして未だに最も使用されている薬であるが、使用しない方が良いことがはっきりと確立されてきた。スウェーデンのSABINA研究はSABA誤用の重要な証拠を示し、安全性に対する新たな警告を発し、現在行われている喘息レスキュー管理を変える必要があることをさらに示した。ーーーSABAの正しい管理に向けた、世界的なパラダイムの変化が必要であることは明らかである。”

 

 

以下はSABINA研究の要旨を翻訳したものです。

喘息における短時間作用型β2刺激薬の過剰使用は、増悪および死亡リスクの上昇と関連している:グローバルSABINAプログラムの全国コホート研究
Overuse of short-acting β 2-agonists in asthma is associated with increased risk of exacerbation and mortality: a nationwide cohort study of the global SABINA programme

Eur Respir J. 2020 Apr 16;55(4):1901872. 

DOI: 10.1183/13993003.01872-2019

 

要旨
背景

短時間作用型β2刺激薬(SABA)の過剰使用は、喘息のコントロール不良と健康上の悪影響を示す可能性がある。SABAの使用、危険因子、喘息の増悪および死亡率に対するSABAの(過剰)使用の影響に関する、人口ベースのデータは乏しいため、グローバルSABINA(SABA use IN Asthma)プログラムを開始するに至った。

方法

スウェーデンの国別登録からのデータをリンクすることにより、2006年から2014年の間に2種類以上の閉塞性肺疾患治療薬を使用していた12~45歳の喘息患者を対象とした。SABAの過剰使用の定義は、登録後の1年間でSABA吸入薬を2缶以上したものとした。SABAの使用数は、1年あたり3~5本、6~10本、および11本以上のグループに分類された。Cox回帰を用いて、SABA使用と増悪(入院および/または経口コルチコステロイドの必要性)および死亡率との関連を検討した。

結果

解析には365,324人の喘息患者(平均年齢27.6歳、女性55%)が含まれ、平均追跡期間は85.4ヵ月であった。30%がSABAを過剰に使用しており、21%が年間3~5本、7%が年間6~10本、2%が年間11本以上のSABAを使用していた。SABA使用数の増加は、以下のように増悪リスクの上昇と関連していた。1年に2本以下の場合と比較すると、3~5本のハザード比(HR)1.26(95%CI 1.24~1.28)、6~10本のHR 1.44(1.41~1.28)、11本以上のHR 1.77(1.72~1.83)であった。SABAの使用量の増加に従い、死亡リスクが次のように漸増していた(観察された死亡数は2564例)。年間2本以下と比較して、3~5本:HR 1.26(95%CI 1.14~1.39);6~10本:1.67(1.49~1.87);11本以上:2.35(2.02~2.72)。

結論

スウェーデンでは、喘息患者3人に1人は年間3本以上のSABA吸入薬を使用していた。SABAの過剰使用は、増悪と死亡リスクの上昇と関連していた。今回の結果により、SABA使用をモニタリングすることが喘息管理を改善する鍵にするべきであることが強調される。