ぜん息関連

短時間作用型β2刺激薬(SABA)を過剰に使用すると、喘息の増悪(発作)および死亡リスクが上昇する(ERJ誌からの報告)

ぜん息関連  / 院長による医学論文紹介

 

SABAは使用実感と効果感に優れており、使用すると数分で効果が実感できる薬です。喘息患者さんは24時間ずっと症状があるわけではなく、朝起きたとき、風邪をひいたとき、季節の変わり目など、症状のでやすい時間帯、時期があります。症状がでたときに薬を使って数分で楽になった後、しばらく症状がないのであればその薬だけでいいのではないかと思ってしまいます。

 

しかし、SABAは使いすぎると危険な薬です。毎朝や毎週のように定期的に使うべきではありません。

 

今回紹介するSABINA研究は、スウェーデンで行われたSABA過剰使用に関する大規模な調査です。

35万人以上の喘息患者を対象としたこの調査では、喘息患者の3分の1でSABAが過剰に使用されていた報告しています。そして、SABAの過剰使用により死亡リスクが増加していました。ここでいう過剰使用の定義は、1年間でSABA吸入器を2缶以上、つまりSABAを週に2回以上、年間を通して使用することとしています。

 

 

 

SABINA研究が掲載されているERJ誌のEditorialにおいて、Jeremy Charriot等は以下のように述べています。

Asthma rescue treatments, time to reboot:

European Respiratory Journal 2020 55: 2000542;

DOI: 10.1183/13993003.00542-2020

“SABAとOCS(経口ステロイド薬)は、喘息発作のレスキューとして未だに最も使用されている薬であるが、使用しない方が良いことがはっきりと確立されてきた。スウェーデンのSABINA研究はSABA誤用の重要な証拠を示し、安全性に対する新たな警告を発し、現在行われている喘息レスキュー管理を変える必要があることをさらに示した。ーーーSABAの正しい管理に向けた、世界的なパラダイムの変化が必要であることは明らかである。”

 

以下はSABINA研究の要旨を翻訳したものです。

喘息における短時間作用型β2刺激薬の過剰使用は、増悪および死亡リスクの上昇と関連している:グローバルSABINAプログラムの全国コホート研究

Overuse of short-acting β 2-agonists in asthma is associated with increased risk of exacerbation and mortality: a nationwide cohort study of the global SABINA programme

Eur Respir J. 2020 Apr 16;55(4):1901872. 

DOI: 10.1183/13993003.01872-2019

 

要旨

背景

短時間作用型β2刺激薬(SABA)の過剰使用は、喘息のコントロール不良と健康上の悪影響を示す可能性がある。SABAの使用、危険因子、喘息の増悪および死亡率に対するSABAの(過剰)使用の影響に関する、人口ベースのデータは乏しいため、グローバルSABINA(SABA use IN Asthma)プログラムを開始するに至った。

方法

スウェーデンの国別登録からのデータをリンクすることにより、2006年から2014年の間に2種類以上の閉塞性肺疾患治療薬を使用していた12~45歳の喘息患者を対象とした。SABAの過剰使用の定義は、登録後の1年間でSABA吸入薬を2缶以上したものとした。SABAの使用数は、1年あたり3~5本、6~10本、および11本以上のグループに分類された。Cox回帰を用いて、SABA使用と増悪(入院および/または経口コルチコステロイドの必要性)および死亡率との関連を検討した。

結果

解析には365,324人の喘息患者(平均年齢27.6歳、女性55%)が含まれ、平均追跡期間は85.4ヵ月であった。30%がSABAを過剰に使用しており、21%が年間3~5本、7%が年間6~10本、2%が年間11本以上のSABAを使用していた。SABA使用数の増加は、以下のように増悪リスクの上昇と関連していた。1年に2本以下の場合と比較すると、3~5本のハザード比(HR)1.26(95%CI 1.24~1.28)、6~10本のHR 1.44(1.41~1.28)、11本以上のHR 1.77(1.72~1.83)であった。SABAの使用量の増加に従い、死亡リスクが次のように漸増していた(観察された死亡数は2564例)。年間2本以下と比較して、3~5本:HR 1.26(95%CI 1.14~1.39);6~10本:1.67(1.49~1.87);11本以上:2.35(2.02~2.72)。

結論

スウェーデンでは、喘息患者3人に1人は年間3本以上のSABA吸入薬を使用していた。SABAの過剰使用は、増悪と死亡リスクの上昇と関連していた。今回の結果により、SABA使用をモニタリングすることが喘息管理を改善する鍵にするべきであることが強調される。

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

その息切れはCOPDです

コントロール不良喘息に対し、3剤合剤吸入(エナジア®)は2剤合剤吸入(アテキュラ®またはアドエア®)より有効(IRIDIUM試験)(LANCET Resp. Med誌より)

ぜん息関連  / 院長による医学論文紹介
  • エナジア®の治験=IRIDIUM試験

 アテキュラ®とエナジア®という新薬がもうすぐ使用できるようになります。先週のブログでは、アテキュラ®が承認される元となった治験(PALLADIUM試験)を紹介しました。

コントロール不良喘息にはモメタゾン+インダカテロール(アテキュラ®)はモメタゾン(アズマネックス®)より有効、フルチカゾン+サルメテロール(アドエア®)とは同等の効果

本日はエナジア®が承認されることなった元の治験(IRIDIUM試験)についてお話します。

 

  • エナジア®はトリプル吸入薬

 アテキュラ®が2剤の合剤であったのに対し、エナジア®は3剤の合剤であり、トリプル吸入薬になります。つまり、エナジア®を1回吸入すれば3種の薬を同時に吸入できます。合剤がなければ3つの吸入器をそれぞれ吸入しないといけないことを考えると、合剤を使うと患者さんの手間は3分の1になります。患者さんにとっては負担が減り、服薬遵守率の改善に伴い治療効果の向上が望めます。(どんなに良い薬でも、服薬しなければ治療効果はゼロだからです。)

 

  • 吸入薬はICS、LABA、LAMAの3種類

 現在、喘息およびCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の長期管理に使用する吸入薬はその作用機序から、吸入ステロイド(ICS)、長時間作用型吸入β2刺激薬(LABA)、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)の3種類に分類されます。

 COPDの患者さんに対してはLAMAとLABAを中心に必要に応じてICSを追加するという治療方針をとります。一方、喘息の患者さんに対しては、ICSとLABAをまず使用して、コントロールできない場合にはLAMAを追加します。現在日本で喘息に使用できるICS+LABA合剤として、アドエア®、シムビコート®、フルティフォーム®、レルベア®の4種があります。この4種でコントロール不良の場合、追加できるLAMAはまだスピリーバ®のみです。そのため、3剤を吸入してもらっている患者さんは、異なる使用方法の吸入器2つで、毎日2回以上吸入しています。

 例えば、シムビコート®とスピリーバ®を使用している患者さんは、シムビコート®は朝晩の1日2回、患者さんによって1回あたり1〜4吸入します。スピリーバ®は朝か晩の1日1回、1回あたり2吸入します。シムビコート®は粉末、スピリーバ®はエアゾールであり、吸入器の扱い方は全く異なります。患者さんにとっては、これをすべて覚えた上で、忘れずに毎日行うのはかなり大変だと思います。

 

  • エナジア®と、テリルジー®、ビレーズトリ®

 2020年7月時点で販売されている3剤合剤の吸入薬にはテリルジー®とビレーズトリ®の2つがあります。いずれも保険適応病名はCOPDのみなので、喘息に使用することはできません。

 過去のブログ記事参照

COPD に 対して3 剤同時吸入療法と 2 剤同時吸入療法では治療効果に差があるのか(IMPACT試験)

COPD(慢性閉塞性肺疾患)における3剤併用療法と2剤併用療法の治療効果は血中好酸球数で異なるのか:IMPACT試験の分析

中等症以上のCOPDには3剤合剤(トリプル)吸入療法が増悪予防に有効(ETHOS試験とIMPACT試験の比較)

 日本でもトリプル吸入療法が喘息に使用できるようになるのは、喘息患者さんにとって朗報だと思います。今回紹介するエナジア®は近日中に使用できるようになりますし、まだ噂レベルですがテリルジー®も喘息に適応拡大されるみたいです。

 

  • ーーーここから専門的な記述になりますーーー

 PALLADIUM試験とIRIDIUM試験の最大の違いは、試験治療薬がPALLADIUMは2剤(アテキュラ®)に対し、IRIDIUMは3剤(エナジア®)になっているところです。対照薬が2剤(アドエア®)ですので、PALLADIUMは非劣性試験、IRIDIUMは優越性試験になります。(薬を3剤に増やすと、有害事象は必ず増えるので、治療効果が非劣性では意味がありません。)優越性を示すためには、2剤ではコントロールできず3剤でコントロールできるような患者を対象に選ばなければなりません。

 患者登録基準をみてみると、PALLADIUM試験では%FEV1が50〜85%、中用量または高用量のICS療法または低用量ICS+LABA療法にもかかわらず喘息管理質問票7(ACQ7)のスコアが1.5以上、 喘息増悪の既往は不問とされています。一方のIRIDIUM試験では中用量または高用量のICS-LABAによる治療にもかかわらず、前年に少なくとも1回の喘息増悪があり、%FEV1が80%未満、症状を有する患者となっています。

 

 実際に登録された患者の特徴をみてましょう。

試験名 PALLADIUM試験 IRIDIUM試験
試験適格基準

%FEV1が50〜85%

中/高用量ICS、または低用量ICS+LABAで治療中

喘息管理質問票7(ACQ7)のスコアが1.5以上

6週間以内に喘息増悪の既往があると除外

%FEV1が80%未満

中/高用量ICS-LABAで治療中

喘息管理質問票7(ACQ7)のスコアが1.5以上

1年以内に少なくとも1回の喘息増悪あり

6週間以内に喘息増悪の既往があると除外

患者背景

直近1年以内の喘息増悪を起こした回数と患者割合
 0回 69%
 1回 24%


気管支拡張剤吸入前の%FEV1
 67.3% (SD 8.64%)

治療前ACQ7スコア
 平均 2.3 (SD 0.48)

前治療
 低用量ICS+LABA 69%
 中用量ICS    20%

直近1年以内の喘息増悪を起こした回数と患者割合
 0回 <1%
 1回 80%
 2回 16%


気管支拡張剤吸入前の%FEV1
  54.8% (SD 13.65%)


治療前ACQ7スコア
 平均 2.5 (SD 0.57)

前治療
 中用量ICS+LABA 62%
 高用量ICS+LABA 37%

 

 このように、IRIDIUM試験に参加した患者は、PALLADIUM試験よりも重症の喘息であることがわかります。上記のような患者像に対しては、2剤より3剤の方が有効である(優越である)ことを証明しました。

 

  • ーーーこれからは私見ですーーー

 下記のグラフは試験期間中のピークフロー改善量を各治療群毎にみています。

 期間中を通じてピークフローは、高用量エナジア®は45ml程度、中用量エナジア®は40ml程度、高用量アテキュラ®は25-30ml、中用量アテキュラ®は20-25ml改善しています。

 ピークフローが5ml増えても、患者さんの自覚症状はほとんど変わりないことが想定されます。つまり、例えば中用量アテキュラ®で治療中の患者さんの日々の症状を改善しようと思ったときは、高用量アテキュラ®に変更するより中用量エナジア®に変更するべきです。ICSの用量を増やしてPEFを5ml増やすよりも、LAMAを追加してPEFを20ml増やした方が症状の改善につながり、患者さんは喜ぶと思います。

 逆に、患者さんの自覚症状改善よりも増悪発生を抑えたいときは、ICSを増やした方がよいことが予想されます。しかし、今回の1年という観察期間では増悪発生回数が少ないため、そこまでは読み取れるデータはありませんでした。

  • ーーー以下は論文要旨ですーーー

Once-daily, single-inhaler mometasone–indacaterol–glycopyrronium versus mometasone–indacaterol or twice-daily fluticasone–salmeterol in patients with inadequately controlled asthma (IRIDIUM): a randomised, double-blind, controlled phase 3 study

コントロール不良喘息の患者を対象とした、1日1回吸入のモメタゾン-インダカテロール-グリコピロニウム療法とモメタゾン-インダカテロール療法、または1日2回吸入のフルチカゾン-サルメテロール療法の比較:無作為化二重盲検第3相試験(IRIDIUM試験)

 

The Lancet Respiratory Medicine

Published:July 09, 2020

DOI:https://doi.org/10.1016/S2213-2600(20)30190-9

 

概要

背景

吸入コルチコステロイドと長時間作用型β2アドレナリン受容体作動薬(ICS–LABA)の併用療法ではコントロールが不十分な喘息患者には、長時間作用型ムスカリン受容体拮抗薬を追加が有効である場合がある。 IRIDIUM試験の目的は、不適切にコントロールされた喘息患者において、ICS–LABAと比較して、フランカルボン酸モメタゾン、酢酸インダカテロール、臭化グリコピロニウム(MF–IND–GLY)の1日1回吸入療法の有効性と安全性を評価することあった 。

方法

52週間における二重盲検、二重ダミー、並行群、アクティブ制御の今回の第3相試験では、41か国の415施設から患者が募集された。中用量または高用量のICS-LABAによる治療にもかかわらず、前年に少なくとも1回の喘息増悪があり、%FEV1が80%未満、症状を有する18〜75歳の喘息患者が含まれた。登録患者は相互反応技術を用いて無作為に振り分けられ、中用量または高用量のMF-IND-GLY(80μg、150μg、50μg;160μg、150μg、 50μg)またはMF-IND(160μg、150μg;320μg、150μg)をBreezhalerで1日1回吸入、または高用量のフルチカゾン-サルメテロール(FLU-SAL; 500μg、50μg)をDiskusで1日2回吸入の5群に1:1:1:1:1で割り当てられた。主要な評価項目は、反復測定の混合モデルによって解析された完全解析セット(FAS)患者での、MF-IND-GLY群とMF-IND群における、治療26週目のトラフFEV1の治療前からの変化量の比較であった。安全性は、少なくとも1回量の治験薬を投与されたすべての患者で評価された。この試験はClinicalTrials.gov, NCT02571777に登録され、完了している。

調査結果

2015年12月8日から2019年6月14日までの間に、スクリーニングを受けた4851人の患者のうち3092人がランダムに割り当てられた(中用量MF–IND–GLY、n = 620;高用量MF–IND–GLY、n = 619;中用量MF-IND、n = 617;高用量MF-IND、n = 618;高用量FLU-SAL、n = 618)。 2747人(88.8%)の患者が52週間の治療を完了し、321人(10.4%)が試験治療を開始したが早期中止した。 中用量MF–IND–GLY(治療差[Δ] 76 mL [95%CI 41–111]; p <0.001)および高用量MF–IND–GLY(Δ65 mL [31–99]; p <0.001)は、MF-INDの対応する用量と比較して、26週目トラフFEV1の優れた改善を示した。26週目トラフFEV1の改善量は、高用量FLU–SALと比較して、中用量MF-IND-GLY(99 mL [64–133]); p < 0.001)および高用量MF–IND–GLY(119 mL [85–154]; p <0.001)の両群において大きかった。全患者において、有害事象の発生率は治療群間でバランスが取れていた。 研究期間中に7例の死亡が報告された(中用量MF-IND-GLYが1名、高用量MF-IND-GLYが2名、高用量MF-INDが4名)。 これらの死亡例のいずれにおいても、治験薬またはその他の治験関連要因が死因とは担当医は考えていなかった。

解釈

ICS-LABA併用(MF-INDおよびFLU-SAL)と比較して、MF-IND-GLYの1日1回1回1吸入により、喘息のコントロールが不十分な患者の肺機能が改善された。 安全性プロファイルは治療群間で類似していた。 したがって、MF-IND-GLY療法は、これらの患者にとって優れた治療選択肢となる。

資金提供

ノバルティス製薬

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

その息切れはCOPDです

コントロール不良喘息にはモメタゾン+インダカテロール(アテキュラ®)はモメタゾン(アズマネックス®)より有効、フルチカゾン+サルメテロール(アドエア®)とは同等の効果。(PALLADIUM試験: LANCET Resp Med誌より)

ぜん息関連  / 院長による医学論文紹介
  • 喘息の新しい吸入薬、アテキュラ®とエナジア®

 ノバルティス社よりアテキュラ®とエナジア®という新薬が発売されることが発表されました。いずれも喘息に対する吸入薬であり、アテキュラ®が2剤の合剤、エナジア®が3剤の合剤であり、1回吸入操作すれば2つもしくは3つの薬を同時に吸入できるという特徴があります。

 

  • 喘息吸入薬の主役、ICS+LABA

 喘息の長期管理に使用する吸入薬はその作用機序から3つに分類されます。吸入ステロイド(ICS)、長時間作用型吸入β2刺激薬(LABA)、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)の3つであり、略語で呼ぶことが多いです。喘息の長期管理にはICSが欠かすことのできない薬剤であり、歴史もあるため様々な種類のICSが各社から発売されていますが、最近ではより治療効果の高いICS+LABAが喘息に対し使用されることが多くなっています。

 

  • アテキュラ®の治験=PALLADIUM試験

 喘息に使用できるICS+LABAとして、アドエア®、シムビコート®、フルティフォーム®、レルベア®の4種が日本で現在使用できます。それに、アテキュラ®が新たに加わることになります。

 新薬が承認販売されるまでに、その薬が有効かつ安全であることが論文で報告されていることが通常求められます。今回紹介する論文にはアテキュラ®が承認される元となった治験(PALLADIUM)のデータが報告されています。

 

  • ーーーここから専門的な記述になりますーーー

 

 PALLADIUM試験では、対標準1秒量(%FEV1)が50〜85%とやや低い患者を対象とし、トラフ一秒量が治療26週間でどれぐらい改善するかを主要評価項目としています。登録患者のベースラインの特徴をみると、前治療は、低用量ICS+LABAが69%が最も多く、中用量ICSが20%、中用量以上のICS+LABAは3%と少なめです。気管支拡張薬投与前の%FEV1は平均67.3% (SD 8.64%)と低く、FEV1の可逆性は22.8% (SD 13.09%)でした。登録前の直近1年間に喘息増悪を1回のみ起こした患者は24%、2回以上は7%でした。

 

 このようなコントロール不良の喘息患者を、治験薬開始2週間前から低用量ICSのみの治療(フルタイド®200μg/日程度)に切り替えて、さらに状態を悪くしてから治験薬を開始しています。

 その結果、すべての治療群でトラフ一秒量の改善が見られましたが、ICS単剤よりICS+LABAの方がさらに改善していました。アテキュラ®とアドエア®については治療効果に差はなく、非劣性が証明されました。

 

 アズマネックス®ツイストヘラーで使用されるモメタゾンの用量と、アテキュラ®ブリーズヘラーのモメタゾンの用量には違いがあります。この第3相試験の前に、用量を確認する試験が行われており、モメタゾンの血中濃度はツイストヘラーとブリーズヘラーで異なることが学会発表レベルで報告されています(Eur Respir J. 2012; 40P2145)。さらに、ブリーズヘラーによるモメタゾンの治療効果は、ツイストヘラーによるモメタゾンの効果と、用量が異なっていても同様なようです。(Eur Respir J. 2014; 44P915)

 

  • ーーーこれからは私見です。ーーー

 

 アテキュラ®は、喘息に使えるICS+LABAの選択肢の一つに加わったと考えてよいでしょう。吸入薬は内服薬と違って、吸入デバイスが各社でバラバラです。患者さんがどのデバイスが使いやすいか選べるようになるので、吸入薬の選択肢が増えることは悪くはありません。

 アテキュラ®が採用するブリーズヘラーは、1日1回カプセルを容器に充填するという面倒くささはありますが、しっかり最後まで薬を吸入できたかその都度確認できるという利点もあります。毎日カプセルを充填するという作業をいとわない患者さんであれば、確実に吸入してもらえるという点で安心感はあります。

 逆に言うと、1日の吸入回数やデバイスの違い以外に、ICS+LABAの各吸入薬に大きな違いはありません。薬剤の作用もほぼ変わりないので、5種類あるICS+LABAのうちどれかを治療効果で選ぶことはできません。患者さんが毎日しっかり吸ってくれる薬が、最も有効な薬だと言えるでしょう。

 ノバルティス社としてはアテキュラ®よりも次回紹介するエナジア®に注力したいのではないでしょうか。エナジア®は喘息に使用できる初めてのトリプル吸入(ICS+LABA+LAMA)となるからです。

 

  • ーーー以下に翻訳した論文要旨を載せます。ーーー

Once-daily mometasone plus indacaterol versus mometasone or twice-daily fluticasone plus salmeterol in patients with inadequately controlled asthma (PALLADIUM): a randomised, double-blind, triple-dummy, controlled phase 3 study

コントロール不良喘息の患者を対象とした、1日1回吸入のモメタゾン-インダカテロール療法とモメタゾン療法、または1日2回吸入のフルチカゾン-サルメテロール療法の比較:無作為化二重盲検トリプルダミー第3相試験(PALLADIUM試験)

The Lancet Respiratory Medicine

Published:July 09, 2020

DOI:https://doi.org/10.1016/S2213-2600(20)30178-8

 

概要

背景

吸入コルチコステロイド(ICS)と長時間作用型β2-アドレナリン受容体アゴニスト(LABA)の固定用量併用(FDC)は、喘息管理において安全で有効と考えられている。 使用可能なほとんどのFDCは、最適な治療効果を達成するために1日2回の投与を必要とする。 PALLADIUM試験の目的は、コントロール不良の喘息患者における、フランカルボン酸モメタゾンと酢酸インダカテロール併用療法(MF-IND)と、フランカルボン酸モメタゾン単剤療法(MF)の1日1回FDCの有効性と安全性を評価することであった。

 

方法

52週間、二重盲検、トリプルダミー、並行群の今回の第3相試験では、24か国の316施設から患者を募集した。 12〜75歳で、1年間以上の喘息診断が文書でなされており、%FEV1が50〜85%であり、中用量または高用量のICS療法または低用量ICS+LABA療法にもかかわらず喘息管理質問票7(ACQ7)のスコアが1.5以上の患者が含まれた。 喘息増悪の既往は、試験の要件ではなかった。 参加者は対話型応答技術を介して、52週間の次のいずれかの治療群にランダムに割り当てられた(1:1:1:1:1)。高用量MF–IND(320μg、150μg)または中用量MF–IND (160μg、150μg)をBreezhalerで1日1回吸入; Twisthalerによる高用量MF(800μg[400μgを1日2回])または中用量MF(1日1回400μg)、または高用量フルチカゾンプロピオン酸-サルメテロールキシナホエート(FLU-SAL; 500μg、50μg)をDiskusで1日2回吸入。参加者は、適切となるようにBreezhalerまたはTwisthaler、Diskusでプラセボを朝と夕に吸入をした。 主要評価項目は、治療前から治療26週後にかけて、対応するそれぞれの用量のMFと比較して、高用量および中用量のMF-INDのトラフFEV1がどの程度改善するかであり、反復測定混合モデルを使用して完全解析セット(FAS)で解析した。副次評価項目の1つとして、反復測定の混合モデルを使用して、1日1回の高用量MF-INDによる26週目のトラフFEV1の改善量が、1日2回の高用量FLU-SALと非劣性かどうかを-90 mLのマージンで比較した。 少なくとも1回の治験薬を投与されたすべての患者で安全性が評価された。 この試験はClinicalTrials.gov、NCT02554786に登録され、完了している。

 

結果

2015年12月29日から2018年5月4日までの間に、2,216人の患者がランダムに割り当てられ(高用量MF-IND、n = 445;中用量MF-IND、n = 439;高用量MF、n = 442;中用量MF、n = 444;高用量FLU-SAL、n = 446)、そのうち1,973人(89.0%)は試験治療を完了し、234人(10.6%)は試験治療を早期中止した。 高用量MF–IND(治療差[Δ] 132 mL [95%CI 88〜176]; p <0.001)および中用量MF–IND(Δ211 mL [167〜255]; p <0.001)は、治療前からの治療26週後のトラフFEV1の改善量が、対応するMF用量よりも優れていることを示した。治療前からの治療26週後のトラフFEV1の改善量において、高用量MF-INDは高用量FLU-SALと比較し非劣性であった(Δ36 mL [− 7〜80];p= 0.101)。 全体として、有害事象の発生率はすべての治療群で同様であった。

 

解釈

ICSとLABAの1日1回FDC(MF-IND)は、ICS単剤療法(MF)よりも26週後の肺機能を有意に改善した。 高用量MF-INDは、トラフFEV1の改善に関して、ICSとLABA併用1日2回(高用量FLU-SAL)より劣ってはいなかった。 MF–IND併用療法は、喘息コントロールのため1日1回ドライパウダーによる新しい治療選択肢となる。

資金提供

ノバルティス

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

その息切れはCOPDです