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禁煙したりタバコの本数を減らしても、肺機能が低下していくスピードは元通りにはならない:NHLBIプールコホート研究の二次データ分析

 肺機能は年齢と共に低下することがわかっています。子供の頃から綺麗な空気のみ吸っていれば肺の老化が抑えられ、肺年齢を若く保つことができます。しかし、タバコの煙や大気汚染などで私達の気管支や肺は炎症を起こし傷つきます。軽い炎症であれば元に戻りますが、軽い炎症でも毎日繰り返し起こしていると元に戻らず慢性化します。気管支に慢性の炎症が起こると、気管支粘膜が肥厚し、気管支内腔が狭くなります(COPD)。肺胞が慢性炎症を起こすと、肺胞の壁が壊れていきます(気腫化)。その結果、肺機能は低下していきます。具体的には、一秒間で吐ける息の量(一秒量)が少なくなっていきます。
 肺気腫、COPDの原因として最も多いものは喫煙です。喫煙を長年続けると、肺機能は年々低下していきます。今回紹介する論文によると、喫煙者では一秒量が年々約40mlずつ低下していきます。若いときは元々の一秒量に余裕があるので問題ありませんが、高齢になるにつれ一秒量が不足していきます。一秒量が全体の70%を切るようになると、COPDという病名がつきます。COPD患者さんでは息を吐き切るのに時間がかかるため、労作時息切れなどの症状がでてくるようになります。
 喫煙により一秒量が低下していくスピードは加速されます。禁煙をすることで、一秒量低下のスピードは、もともとタバコを吸っていない人のスピードと同じに戻ると今までは考えられていました。しかし、それはかなり古いデータを根拠にしており、本論文の著者らはそこに疑問を感じて、今回の研究を行いました。解析の結果、一度習慣的に喫煙をしてしまうと、禁煙しても一秒量の低下スピードは遅くはなるが元通りにはならないということが判明しました。また、禁煙できずタバコの本数を減らす方も多いのですが、減らしただけでは非喫煙者と比べると一秒量の低下スピードは速いこともわかりました。
 肺機能検査を行うことにより自分の肺年齢を調べることができます。肺年齢が実際の年齢より高くないか一度検査しておくことをお勧めします。

 

Published:October 09, 2019

THE LANCET Respiratory Medicine

DOI:https://doi.org/10.1016/S2213-2600(19)30276-0

まとめ

背景

現在多くの先進国では、既喫煙者数は現喫煙者数より上回っており、現喫煙者の1日喫煙本数も少なくなっている。 禁煙すると肺機能低下が正常化することを示唆する報告があるが、反応機構研究では肺機能低下が続く可能性が示唆されている。今回、既喫煙者および喫煙本数の少ない現喫煙者では、非喫煙者と比較して肺機能低下のスピードが速いと仮定した。主な肺疾患をもたない非喫煙者の解析も行った。

方法

NHLBIでプールされているコホート研究の中から、米国の住民をベースにした6つのコホートのデータを使用した。 正式なスパイロメトリーを2回以上行った参加者のみを対象とした。 2つのコホートが若年成人(17歳以上)を対象、2つが中年以上の成人(45歳以上)を対象、2つが高齢者のみ(65歳以上)を対象として、1983年から2014年まで検査を行った。社会人口統計学的および人体計測的な要因で調整した混合モデルを用いて、既喫煙者と現喫煙者における一秒量の低下と非喫煙者における一秒量の低下を比較した。また、禁煙期間と累積たばこ消費量(パック年数)、現在のタバコ消費量(1日の本数)によって一秒量低下の差を評価した。

結果

25,352人の参加者(17〜93歳)が70,228回の正式なスパイロメトリーを実施した。追跡期間の中央値は7年(IQR 3〜20)であり、年齢中央値(57歳)での一秒量低下は非喫煙者では年間31.01mL(95%CI 30.66〜31.37)、既喫煙者では年間34.97 mL(34.36–35.57)、現喫煙者では年間39.92 mL(38.92–40.92)であった。調整後のデータでは、非喫煙者と比べ既喫煙者は一秒量が年間1.82 mL(95%CI 1.24–2.40)加速的に低下しており、それは現喫煙者の一秒量低下値(年間9.21 mL; 95%CI  8.35–10.08)の約20%であった。非喫煙者と比べ、既喫煙者も禁煙後数十年間は一秒量低下が加速しており、累積喫煙量が少ない(<10パック年)現喫煙者でも一秒量低下の加速が観察された。現在のたばこ消費量に関しては、1日5本未満のたばこを吸う現喫煙者の一秒量低下値(年間7.65 mL; 95%CI 6.21–9.09)は、1日30本以上のタバコを消費する現喫煙者の68%(年間11.24 mL; 9.86–12.62)であり、既喫煙者の約5倍(1.57 mL; 1.00–2.14)であった。主な肺疾患を持たない参加者では関連性が低くなるが、主な結果では一致していた。

解釈

既喫煙者と本数の少ない現喫煙者でも、非喫煙者と比較すると、肺機能低下が加速されていた。 今回の結果は、すべてのレベルのタバコ曝露は持続的かつ進行性の肺損傷と関連している可能性が高いことを示唆する。

資金提供

国立衛生研究所、国立心肺血液研究所、および米国環境保護庁。