オミクロン株流行期間中に、新型コロナの感染を確認して7日が経っても27%の人がコロナ抗原陽性だった(JAMA誌の報告)
R4年9月に厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の患者に対する療養解除基準を見直しました。
R4年8月までは「有症状患者については、発症日から 10 日間経過し、かつ、症状軽快後 72 時間経過した場合には 11 日目から解除を可能」としてました。
9月7日より「有症状患者(入院していない場合)については、発症日から7日間経過し、かつ、症状軽快後 24 時間経過した場合には8日目から解除を可能とする。ただし、10 日間が経過するまでは、感染リスクが残存することから、自主的な感染予防行動の徹底をお願いする。」と変更されました。
つまり、8日目から10日目まではウイルスが残っており、周囲に感染させる可能性があるということです。感染拡大を防ぐことに重きを置くなら10日目まで隔離するべきでしょうが、10日間も仕事を休むと同僚の負担が増えるでしょうし、会社全体として機能が低下するかもしれません。7日間であれば、土日を除くと平日5日間ですので、同時に複数の会社員が発症しない限り会社が機能不全に陥ることは少なそうです。8−10日目までは会社でもできるだけ人と接触せず、マスクはもちろん、手指を頻回に消毒し、社内で感染を広げないようにする必要があります。
では、7日間の療養後にウイルスはどの程度残っているのでしょうか。
今回紹介する論文では、オミクロン株が流行している期間に新型コロナウイルスに感染した大学生アスリートを対象に調査しています。 その結果、264名の大学生(女性53%、平均年齢20.1歳)、268人の感染者(有症状66%、無症状34%)を対象として、7日目の検査を行った248人の感染者のうち、67人(27%)がコロナ抗原検査が陽性でした。
7日後のコロナ抗原陽性という結果が、生きているウイルスを示しているのか、もしくはウイルスは死んで抗原単位にバラバラになっていることを示しているのか、厳密にはわかりません。(厳密にはウイルスを培養しなければなりません。)
しかし、感染者の4人に一人は、感染して7日経ってもコロナ抗原が陽性であり、感染力があるとみなして、対応することが大切です。
オミクロン株流行中における、大学生アスリートがSARS-CoV-2に感染し7日間隔離後の迅速抗原検査陽性率
Prevalence of Positive Rapid Antigen Tests After 7-Day Isolation Following SARS-CoV-2 Infection in College Athletes During Omicron Variant Predominance
JAMA Netw Open. 2022;5(10):e2237149.
Published: October 18, 2022. doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.37149
キーポイント
疑問点:
米国疾病対策予防センターが推奨するSARS-CoV-2感染後の5日間の隔離期間は、感染者が検査で陰性となるのに十分か?
知見:
このケースシリーズでは、SARS-CoV-2陽性と判定された268名の大学生アスリートが、最初に陽性判定を受けた7日後から迅速抗原検査を受けた。7日後の検査結果では、27%の人が陽性であり、症状のある人やオミクロンBA.2株に感染している人では陽性率が高かった。
意味:
この研究結果は、感染者が隔離から早期解除されることを防ぐために、隔離解除の決定を支援する迅速な抗原検査の使用が必要である可能性を示唆している。
概要
重要性:
米国疾病対策予防センターは、2021年12月にSARS-CoV-2感染の推奨隔離期間を10日間から5日間に短縮した。この短縮された隔離期間が終了しても、感染者が迅速抗原検査で陽性となり、潜在的に感染力を持つ可能性があるかどうかは不明である。
目的:
SARS-CoV-2 感染者のうち、診断後 7 日目以降も迅速抗原検査が陽性である人の割合を推定すること。
デザイン、環境、参加者:
このケースシリーズは、2022年1月3日から5月6日の間にSARS-CoV-2陽性となった、全米大学体育協会Division Iの大学キャンパスの学生アスリートを分析したものである。参加者はそれぞれ診断後7日目から迅速抗原検査を受け、隔離期間を終了できるかどうかを判断した。
曝露:
SARS-CoV-2陽性と判定された7日後に迅速抗原検査を実施。
主な結果および測定:
迅速抗原検査の結果、症状の状況、大学の下水分析によるSARS-CoV-2株の同定。
結果
264名の学生アスリート(女性140名[53%]、平均年齢[SD]20.1歳[1.2]、範囲18~25歳)、268人の感染者(有症状177人[66%]、無症状91人[34%])が本研究に含まれた。7日目の検査を行った248人の感染者のうち、67人(27%;95%CI、21%-33%)が依然として検査陽性であった。有症状感染者は無症状感染者に比べて、 7 日目の検査陽性率が有意に高かった(35%; 95% CI, 28%-43% vs 11%; 95% CI, 5%-18%; P < .001)。BA.2変異株の患者は、BA.1変異株の患者と比較して、7日目に陽性となる可能性も有意に高かった(40%;95%CI、29%-51% vs 21%;95%CI、15%-27%;P = 0.007)。
結論と関連性:
このケースシリーズでは、隔離7日後でも27%の人が迅速抗原検査陽性であったことから、米国疾病対策予防センターが推奨する5日間の隔離期間では、進行中の感染拡大を防ぐのに不十分である可能性が示唆された。これらの知見がもと多様な集団や後続する変異株にも当てはまるかどうかを判断するために、さらなる研究が必要である。