院長ブログ

この30年で世界の喫煙率、タバコによる死因は減少したのか(LANCET誌のGBD研究より)

禁煙、環境に関する論文  / 院長による医学論文紹介

WHOタバコ規制枠組条約(FCTC)をご存知でしょうか?2005年に発効したFCTCは国際的に拘束力のある法律です。日本政府もこの条約に同意し、署名しています。

FCTCが発行して14年が経った2019年の時点で、喫煙者と、喫煙が原因の病気がどれぐらい減少したかを世界的に調査したのが、今回紹介する論文です。

以下はDiscussionを抜粋翻訳し、解説を加えます。

喫煙による健康への悪影響が初めて明らかになった1960年代から、いくつかの国でたばこ規制の取り組みが始まっていたが、2005年にWHOタバコ規制枠組条約(FCTC)が成立したことで、タバコ規制の世界的な進展が見られるようになった。WHO FCTC導入後の10年間は、最も多くの国でタバコ喫煙者率が急速に低下した時期であった。 
FCTCの条文にうたわれる需要削減政策の有効性は示され、1990年から2019年の間にタバコ喫煙者は、ブラジル(73.4%減)、ノルウェー(53.5%減)、セネガル(50. 9%減少)で大きく減少し、さらにアイスランド、デンマーク、カナダ、オーストラリア、コロンビア、コスタリカでは減少率が45%を超えた。これらのツールが多様な状況で運用され、今後数十年にわたってタバコ喫煙者率を大幅に減少させ、何百万人もの命を救う可能性を示している。 

政策次第で、これほどまでに命を救う可能性を示されています。政府が動く国と動かない国で、数十年後には喫煙にともなう死者数に大きな差がついてくるのかもしれません。

2019年時点で10億人以上が定期的にタバコを吸っており、約800万人の死亡が喫煙に起因していた。喫煙は、男性では全死因の20.2%を占め、死亡と障害調整生存年数(DALYs)の両方の主要な危険因子となっていた。女性では、男性よりも喫煙率が低く、喫煙期間も短く、喫煙強度も低いため、喫煙は全死因の約5.8%を占めていた。

男性の死因の20%はタバコによるもの。この世からタバコが無くなれば、死因の20%が変わる可能性があるということ。もしタバコが無くなれば、現在はランキング上位にいる心筋梗塞や脳卒中、肺がん、COPDなどが下がり、ランキング外の死因が上位に上がってくるということでしょう。

タバコの規制により、世界のタバコ喫煙者率は、男性で27.5%(95%UI 26.5-28.5)、女性で37.7%(35.4-39.9)減少した。しかし、このような世界的な集計では、国ごとの重要な多様性が考慮されていない。1990年から2019年の間に、男性では135カ国、女性では68カ国でタバコ喫煙者率の有意な低下が観察されたのに対し、男性では20カ国、女性では12カ国で有意な上昇が観察された。 

日本においてはどうだったのでしょうか。

論文によると、女性では23.6%減少 、男性では41.7%減少と報告されています。

日本もようやく世界の喫煙率に追いついてきたというところでしょうか。下図は、男性においてタバコがどれぐらい死因に寄与しているかを示しています。中国では30〜35%、ロシアでは25〜29%の死因がタバコ由来となっています。日本では20〜25%の群に割り当てられています。

以下、本文要旨の翻訳です。

1990年~2019年のおける204の国と地域でのタバコの喫煙者率、タバコが原因となる疾病負担の空間的、時間的、人口統計学的パターン:世界疾病負担調査2019による系統的分析Spatial, temporal, and demographic patterns in prevalence of smoking tobacco use and attributable disease burden in 204 countries and territories, 1990–2019: a systematic analysis from the Global Burden of Disease Study 2019GBD 2019 Tobacco Collaborators †ARTICLES| VOLUME 397, ISSUE 10292, P2337-2360, JUNE 19, 2021DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)01169-7

概要

背景世界的なタバコの流行に終止符を打つことは、グローバルヘルスにおける重要な課題である。国内および世界規模でタバコ対策を行うためには、タバコ喫煙者率とタバコに起因する疾病負担をタイムリーかつ包括的に推定する必要がある。方法Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Studyの一環として、1990年から2019年にかけて、204の国と地域を対象に、年齢と性別ごとに、タバコ喫煙者率と、タバコが原因となる疾病負担を推定した。3,625件の国別代表調査から得られた複数の喫煙関連指標をモデル化した。因果関係のある36の健康アウトカムについてシステマティックレビューとベイズメタ回帰を行い、現喫煙者と既喫煙者の非線形な用量反応リスクカーブを推定した。また、直接推定法を用いて帰属負担を推定し、これまでよりも包括的に喫煙の健康影響を推定した。調査結果世界では、2019年に11.4億人(95%不確実性区間 11.3-11.6)の人が現喫煙者であり、7.41兆本(7.11-7.74)の紙巻たばこ換算量を消費していた。15歳以上の男性(27.5%減[26.5-28.5])および女性(37.7%現[35.4-39.9])、喫煙率が1990年から大幅に減少していたが、人口増加に伴い、喫煙者の総数は1990年の9億9,000万人(9.8-10.0)から大幅に増加した。2019年には、世界全体ではタバコ喫煙の使用により769万人(716-820)が死亡し、2億年(1.85-2.14)の障害調整生存年数の原因となり、男性の死亡リスク要因のトップであった(男性死亡の20.2%[19.3~21.1])。タバコ喫煙に起因する769万人の死亡のうち686万人[86.9%]は現喫煙者であった。解釈介入がない場合、喫煙に起因する年間死亡者数769万人、障害調整寿命の2億年は、今後数十年にわたって増加すると考えられる。すべての地域、すべての発展途上国で、タバコ喫煙者率を減らすことに大きな進展が見られたが、タバコ対策の実施には大きな差が残っている。喫煙率の減少を加速させ、国民の健康に多大な恩恵をもたらすために、各国にとって科学的根拠に基づく強力な政策を通す、明確かつ緊急な時機である。資金提供ブルームバーグ・フィランソロピー、ビル&メリンダ・ゲイツ財団

 

年齢調整喫煙率 2019

1990から2019の変化

 

女性

男性

女性

男性

全世界

6·62 %

32·7 %

−37·7% 

−27·5 %

日本

10·2 %

33·4% 

−23·6% 

−41·7% 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

その息切れはCOPDです