「夏風邪」は軽視できない?呼吸器内科からの注意喚起【おきのメディカルクリニック】
夏なのに「咳が続く」「のどが痛い」「微熱がとれない」——それはもしかすると“夏風邪”かもしれません。夏風邪は、エンテロウイルスやアデノウイルスなどが原因で、暑さや冷房、疲労などにより免疫が落ちたタイミングでかかりやすくなります。
特に喘息やCOPDなどの呼吸器疾患、心不全や高血圧など循環器の持病をお持ちの方、高齢者の方は、夏風邪がきっかけで症状が悪化することもあるため注意が必要です。また、脱水症状は心臓に負担をかけ、不整脈や体調不良の原因となることもあります。
当院(仙台市若林区)では、呼吸器内科の専門医が、夏風邪による咳や発熱、息切れ、動悸などの症状に対応しています。この記事では、夏風邪の特徴や注意点、受診の目安についてご紹介します。
【夏風邪とは?】
夏風邪は、夏の暑い時期に流行するウイルス性の風邪のことで、冬の風邪とはウイルスの種類や症状の出かたに違いがあります。主な原因となるのは、エンテロウイルス(コクサッキーウイルスやエコーウイルスなど)、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルスなどで、これらは高温多湿の環境でも活発に活動します。そのため、気温や湿度が高い夏でも感染が広がりやすいのが特徴です。
また、冷房の効いた室内と暑い屋外との寒暖差、冷たい飲み物の摂りすぎ、睡眠不足などにより自律神経が乱れ、体温調節や免疫機能が低下することで感染しやすくなります。
● 夏風邪の主な症状
夏風邪では、一般的に以下のような症状がみられます。
のどの痛み、鼻水、咳
微熱〜高熱(38〜39℃になることも)
倦怠感、頭痛
下痢や腹痛などの消化器症状が出ることも(特に小児や高齢者)
冬の風邪と比べて、胃腸症状や長引く咳が目立つことが多く、1週間以上体調不良が続くケースもあります。
● なぜ夏に風邪をひくの?
風邪といえば冬のイメージが強いかもしれませんが、実は夏にも風邪は起こります。それどころか、夏風邪には夏特有の生活習慣や環境が深く関係しています。
● ウイルスの種類が違うから
夏に流行する風邪は、冬の風邪とは原因となるウイルスが異なります。冬の風邪はライノウイルスやインフルエンザウイルスが主ですが、夏風邪はエンテロウイルスやアデノウイルスなど、暑さと湿気に強いウイルスによって引き起こされます。
たとえば、エンテロウイルス属は消化管で増殖するため、喉の痛みだけでなく腹痛や下痢などの胃腸症状が起こりやすいという特徴があります。アデノウイルスは咽頭結膜熱(いわゆるプール熱)の原因になることがあり、のどの強い痛みや高熱、目の充血などが同時にみられることもあります。
こうしたウイルスは、飛沫感染だけでなく、気温が高くても活発に活動し、タオルやドアノブなどを介した接触感染でも広がるため、家庭内や職場などでも感染が拡大しやすいのが特徴です。
● 冷房による寒暖差と体温調節機能の乱れ
室内は冷房で冷え、外は蒸し暑い――この温度差が自律神経に負担をかけ、免疫力の低下を招きます。自律神経が乱れると、体温調整や白血球の働きが不安定になり、ウイルスに感染しやすくなるのです。
さらに、冷たい飲み物のとりすぎで喉の粘膜が冷やされると、局所の防御機能が低下し、ウイルスが侵入しやすくなります。
● 睡眠不足・夏バテによる免疫力の低下
熱帯夜や冷房による睡眠の質の低下、食欲不振などにより、体全体の免疫機能が低下しやすくなるのも夏風邪の一因です。疲れがたまっているときほど、体はウイルスに抵抗できず、感染しやすくなります。
● 呼吸器・循環器にとっても負担が大きい
夏の暑さや脱水は、呼吸器や循環器にも大きなストレスを与えます。咳が続いているときに脱水状態が重なると、痰が固まり、気道閉塞や呼吸困難を引き起こす原因になります。また、脱水や発熱によって血液が濃くなると、心拍数の上昇や血圧の変動が起こりやすく、心臓への負担が増加します。とくに高齢者や基礎疾患のある方では、夏風邪がきっかけで症状が悪化するケースもあります。
【夏風邪の予防法〜専門医が伝える正しい対策〜】
夏の暑い時期でも風邪は発生します。特に夏風邪は、エンテロウイルスやアデノウイルスなど、暑く湿度の高い環境でも活動できるウイルスが原因です。これらのウイルスは飛沫や接触で簡単に広がるため、夏風邪の予防は日常の生活習慣の中でしっかりと対策を講じることが何より重要です。
1. 手洗い・うがいの徹底でウイルスの侵入を防ぐ
ウイルスは手や物の表面についた状態で口や鼻から体内に侵入します。外出先から帰宅したときや食事前、トイレの後には、流水と石けんを使った正しい手洗いを習慣化しましょう。特に指の間や爪の周りは洗い残しが多いので丁寧に洗うことがポイントです。
また、うがいは喉の粘膜に付着したウイルスを洗い流す効果があります。うがい薬の使用も効果的ですが、できるだけ1日数回のうがいを心がけるだけでも十分に予防効果が期待できます。
2. 室内環境の工夫で体への負担を減らす
夏は冷房が欠かせませんが、冷えすぎた室内と暑い外気の温度差が大きいと自律神経が乱れやすくなり、免疫機能の低下を招きます。**その結果、ウイルスに感染しやすくなるリスクが高まります。
冷房は設定温度を28度前後に設定し、直接冷気が体に当たらないよう工夫しましょう。さらに、室内の湿度を50〜60%に保つことで、喉や鼻の粘膜が乾燥せず、ウイルスの侵入を防ぎやすくなります。加湿器や濡れタオルを活用するのもおすすめです。
3. 適切な水分補給で脱水を防ぐ
夏は汗をかきやすく、知らないうちに脱水状態になることがあります。脱水は血液をドロドロにし、血流障害や心臓への負担を増やし、免疫力も低下させてしまいます。
こまめに水分を摂ることが夏風邪予防には欠かせません。冷たい飲み物は喉を冷やし過ぎてしまうので控えめにし、常温の水やスポーツドリンク、経口補水液を利用して電解質バランスも整えましょう。
5. 適度な運動と生活リズムを整える
汗をかく適度な運動は体の循環を良くし、免疫力アップにも効果があります。ただし、暑さが厳しい時間帯の無理な運動は逆効果なので、早朝や夕方の涼しい時間帯に行うようにしましょう。さらに体の免疫力は、規則正しい生活リズムや質の良い睡眠に大きく左右されます。夏は暑さや冷房の影響で寝苦しく、睡眠不足になりがちです。十分な睡眠時間を確保し、毎日同じ時間に寝起きすることが免疫機能の維持に役立ちます。
また、栄養バランスの良い食事を心がけることも大切です。ビタミンA・C・Eや亜鉛、タンパク質など、免疫をサポートする栄養素を積極的に摂取しましょう。特に暑さで食欲が落ちた場合は、消化に良い食事で無理なく栄養補給を続ける工夫が必要です。
夏風邪は「夏だから大丈夫」と油断しやすいですが、暑さや冷房、生活習慣の乱れによって免疫力が低下しやすい季節です。
日々の生活の中で適切な予防を行い、呼吸器や循環器の健康を守りながら、元気な夏を過ごしましょう。
【まとめ】夏風邪は早めの対処が大切です
夏風邪は「ただの風邪」と油断して放置してしまうと、咳や発熱が長引いたり、呼吸器や循環器に負担をかけて重症化するおそれがあります。特に、喘息や心臓疾患、高血圧などの持病をお持ちの方は、夏風邪が引き金となって症状が悪化することもあるため注意が必要です。
当院おきのメディカルクリニック(仙台市若林区)は、呼吸器内科の専門医が在籍し、夏風邪による咳や息苦しさ、動悸などの症状に対して丁寧な診察と的確な検査・治療を行っています。
「咳が長引く」「呼吸が苦しい」「体がだるい」など、少しでも不調を感じたら、早めの受診で安心して夏を過ごす準備をしましょう。