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夜間勤務が多いと、喘息の発症リスクが増加する(Thorax誌より紹介)

 先進工業国の労働人口の約20%は、夜間勤務のみ、または交代制で夜間勤務していると言われています。人間の体は日中は覚醒し、夜間は睡眠をとるように、生まれつき体内時計(概日リズム)があります。しかし、現代社会は24時間止まることなく動いており、それに合わせて夜間働く人が必要です。夜間勤務の人は夜起きて日中寝るため、体内時計がずれてしまう可能性があります。この体内時計のずれは睡眠障害と関連し、糖尿病など内分泌疾患や、心筋梗塞や脳卒中など心血管疾患、癌になりやすいという報告がすでになされています。

 喘息は日内変動のある病気です。日中は問題なくても、起床時にゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴がするという患者さんがいます。これは、起床時には気管支の内腔径が狭くなっていることを示しており、気管支内腔径が日内変動していることが予想されます。

 今回の論文では喘息の有病率や喘鳴の有無が、夜間勤務の有無と関係するかを検証しています。日中のみ勤務の人と比べて、常時夜勤の人は中等症以上の喘息になるリスクが1.36倍でした

夜間勤務をすると、喘息の発症リスクが増加する

Night shift work is associated with an increased risk of asthma

 

Maidstone RJ, Turner J, Vetter C, et al

Thorax Published Online First: 16 November 2020. 

全文はこちら

http://dx.doi.org/10.1136/thoraxjnl-2020-215218

 

概要

はじめに

シフト勤務は、体内時計と外部の明暗サイクルの間にずれを引き起こし、内分泌疾患やガンの発症と関連している。先進工業国の労働人口の約20%が、常時夜間またはシフト制で夜間勤務をしており、概日リズムのずれによる病気のリスクにさらされている。 シフト勤務が慢性炎症性疾患に及ぼす影響に対する分析は不足している。 われわれはシフト勤務と喘息との関連を調査した。

 

方法

主要な交絡因子(喫煙歴、民族性、社会経済的地位、身体活動、体格指数)を調整し、280,000人を超える英国バイオバンク参加者において、シフト勤務と一般的な喘息との横断的な関連を説明する。 睡眠タイプについても調査した。

 

結果

日中労働者と比較して、常時夜勤労働者は、中等度から重度の喘息(OR 1.36(95%CI 1.03〜1.8))、すべての喘息(OR 1.23(95%CI 1.03〜1.46))をもっている可能性が高かった。 いずれかのタイプのシフト勤務をしている人は、胸部の喘鳴/笛吹音をもっている調整オッズ比が高かった。 夜勤をしたことがない、またはめったに夜勤をしないシフト勤務労働者、および常時夜間勤務をしている人は、肺機能が低下する可能性(調整後)が高かった(FEV1 予測値<80%)。 夜間を含め不規則なシフトで働く朝型睡眠のタイプでは、中等度から重度の喘息のリスクが増加していた(OR 1.55(95%CI 1.06〜2.27))。

 

結論

以上の結果により、喘息とシフト勤務の関連性は高く、公衆衛生への影響は広範囲に及ぶと考えられる。 喘息などの炎症性疾患の発症リスクを減らすため、睡眠タイプを考慮したシフト勤務のスケジュールを変更するような公衆衛生対策を提示するかどうかを判断する縦断的追跡調査が将来必要である。