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PD-L1が高発現している未治療進行期非小細胞肺癌患者に対し、アテゾリズマブ(テセントリク)は単剤で有効なのか

  • PD-1とPD-L1
    • 本庶佑先生がノーベル賞をとった業績は、PD-1の発見でした。PD-1はリンパ球の表面にあるタンパク質であり、免疫寛容の際に重要な役割を果たします。免疫寛容とは、簡単にいうと、自己を自分の免疫細胞に攻撃されないようにするシステムです。免疫細胞には外敵だけ攻撃してもらい、自分の正常な細胞を攻撃してもらっては困るのです。正常細胞はPD-L1というタンパク質を細胞表面に出して、自分を攻撃しないように免疫細胞に伝えているのです。
  • がん細胞とPD-L1
    • 免疫寛容におけるPD-L1をがん細胞は悪用します。がん細胞は人間にとって要らない外敵ですので、非自己として免疫細胞に認識してもらい、攻撃してもらう対象です。しかし、がん細胞は免疫細胞から逃れるように、PD-L1を細胞表面にだすようになります。その結果、正常細胞のように癌細胞は攻撃されなくなり、増殖を続けられるようになります。
  • 免疫チェックポイント阻害薬
    • 免疫療法として認められた、免疫チェックポイント阻害剤には2種類あります。PD-1阻害剤とPD-L1阻害剤です。小野薬品と本庶先生で開発された世界初の薬は、ニボルマブ(オブジーボ®)というPD-1阻害剤です。
    • 日本人としてはニボルマブに頑張ってほしいところですが、最近は海外勢の薬におされています。
  • アテゾリズマブ(商品名 テセントリク®)
    • アテゾリズマブは、ロシュグループ(中外製薬は子会社)が開発する、PD-L1阻害剤です。がん細胞表面のPD-L1と結合し、その働きを抑える抗体薬です。アテゾリズマブはがん細胞のPD-L1と結合し無力化するので、免疫細胞表面のPD-1と結合できなくなります。その結果、免疫細胞は再びがん細胞を攻撃できるようになります。
  • 今回の論文
    • アテゾリズマブが初回治療として、進行期の肺がんに効果があるかを第3相試験として、今までの標準治療であった抗がん剤(プラチナ併用療法)と比較しています。PD-L1を高発現している肺がんに対しては、アテゾリズマブは生存期間を統計学的有意に延長させる効果がありました。
    • ほんの数年前まで一般的に行われていたプラチナ併用療法は、一般的な治療ではなくなってしまうと思われます。時代の速い流れを感じます。

 

PD-L1が発現している非小細胞肺癌患者に対し、アテゾリズマブは単剤で初回治療から有効なのか

Atezolizumab for First-Line Treatment of PD-L1–Selected Patients with NSCLC

N Engl J Med 2020; 383 : 1328 – 39. 

 

背景

PD-L1(programmed death ligand 1)が発現している進行期非小細胞肺癌(NSCLC)患者に初回治療として、プラチナベースの化学療法と比較して抗 PD-L1 モノクローナル抗体であるアテゾリズマブが有効かどうか、また安全かどうかはまだ明らかではない。

方法

前治療歴がなく,SP142 免疫組織化学法にて検査したPD-L1の発現量が腫瘍細胞の 1%以上または腫瘍浸潤する免疫細胞の 1%以上に認める非扁平上皮癌または扁平上皮癌である、進行期NSCLC 患者を対象に,無作為化非盲検第3相試験を実施した。登録患者はアテゾリズマブ群または化学療法群に 1:1 の割合で割り付けられた。EGFR変異やALK転座に関して野生型である腫瘍をもつ患者のITT集団において、全生存期間(主要評価項目)をPD-L1の発現レベルによって階層的に調査した。EGFRとALK が野生型である腫瘍をもつ集団については、2つの PD-L1 検査法および血液中の腫瘍遺伝子変異量(TMB)によるサブグループにおいても全生存期間と無増悪生存期間を前向きに評価した。

結果

全部で572人が登録された。EGFRとALKが野生型で、PD-L1が最も高発現であったサブグループ(205 例)では、化学療法群よりもアテゾリズマブ群の全生存期間中央値が7.1ヵ月長かった(20.2ヵ月 対 13.1ヵ月;死亡に対するハザード比 0.59;P=0.01)。安全性評価ができたすべての患者において、アテゾリズマブ群の90.2%と化学療法群の 94.7%に有害事象を認め、グレード3または4の有害事象はそれぞれ30.1%と52.5%にみられた。血液中のTMBが高いサブグループにおいて、アテゾリズマブの方が全生存期間と無増悪生存期間が良好であった。

結論

PD-L1高発現のNSCLC患者では、その組織型にかかわらず、アテゾリズマブを投与された方がプラチナベース化学療法よりも全生存期間が有意に延長した。

資金提供

エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社/ジェネンテック社;IMpower110 試験 ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02409342