メニュー

テリルジー®はコントロール不良喘息に有効(Lancet Resp Med誌より紹介)

[2020.10.11]

現在、喘息およびCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の長期管理に使用する吸入薬はその作用機序から、吸入ステロイド(ICS)、長時間作用型吸入β2刺激薬(LABA)、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)の3種類に分類されます。患者さんの病名や病状に合わせて呼吸器科医はこれらの薬を使い分けています。

 

  • 3剤合剤(トリプル治療薬)とは

喘息やCOPDが重症になるにつれ、使用する薬剤は1つ→2つ→3つと増えていきます。毎日3つの薬剤を使い分けるのは患者さんにとっては大変な負担であり、3つの薬を一つにまとめた合剤(トリプル治療)が開発されています。

2020年10月時点で、COPDに対して使用できるトリプル治療薬としてテリルジー®とビレーズトリ®の2つがあり、喘息に対して使用できるトリプル治療薬はエナジア®の1つです。

エナジア®が承認されることなった元の治験(IRIDIUM試験)については過去のブログ記事で紹介しました。

コントロール不良喘息に対し、3剤合剤吸入(エナジア®)は2剤合剤吸入(アテキュラ®またはアドエア®)より有効(IRIDIUM試験)(LANCET Resp. Med誌より)

日本でもトリプル吸入療法が喘息に使用できるようになるのは、喘息患者さんにとって朗報だと思います。

 

今回紹介するCAPTAIN試験では、テリルジー®が喘息でも有効であることを示しました。この結果を元に、テリルジー®も喘息に適応拡大されることでしょう。

 

  • ーーーここから専門的な記述となりますーーーー

CAPTAIN試験では6群比較、IRIDIUM試験では5群比較という症例数の大きな臨床試験となっています。

どちらも主要評価項目は一秒量の改善であり、増悪発生率は副次評価項目です。

CAPTAIN試験でもIRIDIUM試験でもLAMAを追加して3剤すると、ICS+LABAより肺機能が改善しています。しかし、CAPTAIN試験ではICSを100から200に増量すると、有意ではないが肺機能がわずかながら改善しているように見えます。さらに増悪の年間発生率をみると、LAMAを追加しても増悪は抑制されるが、ICSを増量するとさらに増悪抑制が強くなっています。血中好酸球数や呼気NOを加味するとさらにその傾向は強くなります。喘息増悪をきたしやすい患者はLAMAを追加だけではなくICSも増量した方がよく、症状改善のみを目的とする患者にはLAMA追加のみでよいと考えられます。エナジアのICS(MF)とテリルジーのICS(FF)を直接比較したわけではないのでなんとも言えないですが、FFの方が効果が強いようにも思えます。

CAPTAIN試験では試験治療薬開始前に、RUN-INとStabilisation期間を設けています。前治療に何を使用していてもアドエア250に変更し3週間使用、その後さらにレルベア100を2週間使用したのちに、無作為化割付を行っています。これはLAMAであるUMECの追加効果を純粋にみたいという意図だと思われます。それと同時に、アドエアとレルベアを計5週間しっかり使用することにより、LAMA追加前にすでに肺機能やACQが改善していることは、前治療の効果やアドヒアランスが悪かったことを示しているようです。

 

過去のブログ記事参照

コントロール不良喘息にはモメタゾン+インダカテロール(アテキュラ®)はモメタゾン(アズマネックス®)より有効、フルチカゾン+サルメテロール(アドエア®)とは同等の効果)(PALLADIUM試験)

COPD に 対して3 剤同時吸入療法と 2 剤同時吸入療法では治療効果に差があるのか(IMPACT試験)

COPD(慢性閉塞性肺疾患)における3剤併用療法と2剤併用療法の治療効果は血中好酸球数で異なるのか:IMPACT試験の分析

中等症以上のCOPDには3剤合剤(トリプル)吸入療法が増悪予防に有効(ETHOS試験とIMPACT試験の比較)

 

Efficacy and safety of once-daily single-inhaler triple therapy (FF/UMEC/VI) versus FF/VI in patients with inadequately controlled asthma (CAPTAIN): a double-blind, randomised, phase 3A trial

喘息のコントロールが不良な患者における1日1回の単一吸入器による3剤併用療法(FF / UMEC / VI)と2剤併用療法(FF / VI)の有効性と安全性の比較(CAPTAIN試験):二重盲検無作為化第3A相試験

Published:September 09, 2020DOI:https://doi.org/10.1016/S2213-2600(20)30389-1

概要

背景

吸入コルチコステロイド+長時間作用性β2刺激薬併用療法(ICS / LABA)を行っても、中等症または重症の喘息患者の30〜50%はいまだコントロールが十分ではない。 単一吸入器にフランカルボン酸フルチカゾン+ウメクリジニウム+ビランテロール(FF / UMEC / VI)の安全性と有効性をFF / VIと比較検討した。

 

方法

今回の二重盲検、ランダム化、並行群間、第3A相試験(CAPTAIN試験)では、

15か国416の病院とプライマリケアセンターから参加者を募集した。18歳以上、ICS / LABA吸入にコントロール不良(喘息管理質問票[ACQ] -6スコアが1.5以上)、スクリーニングの前年に喘息の急性期症状により医療機関を受診もしくは喘息治療が変更となった旨が文書で確認され、気管支拡張薬投与前の一秒量が予測値の30%以上85%未満、スクリーニング時に気道可逆性(FEV 1の アルブテロールまたはサルブタモールを4回吸入し20〜60分前後の一秒量が12%以上から200mL以上の増加として定義)を認める患者を適格とした。

参加者は6群(1:1:1:1:1:1)に、試験開始時における前治療のICS用量によって層別化された中央でのランダム化により無作為に割り付けられ、1日1回のFF / VI(100 /25μgまたは200 /25μg)、FF / UMEC / VI(100/31.25 /25μg、100/62.5 /25μg、200/31.25 /25μg、または200/62.5 /25μg)をエリプタ粉末吸入器(Glaxo Operations UK、Hertfordshire、UK)で投与された。患者や研究者、資金提供者は、治療群の割り当てを知らされなかった。ITT集団での評価されたエンドポイントは、治療前から24週目におけるクリニックで測定した試験薬投与前一秒量の変化量(主要評価項目)と、中等度および/または重度の喘息増悪率(主要副次的評価項目)であった。その他の副次的評価項目は、24週目における試験薬投与後3時間のクリニック一秒量の治療前からの変化量、セントジョージ呼吸器質問票(SGRQ)の合計スコアおよびACQ-7合計スコアとした。治療前から治療21-24週目における、喘息の呼吸器症状評価の合計スコアの変化も副次的評価項目であったが、ここでは報告しない。治療反応に関する2型気道炎症バイオマーカーの探索的分析も行われた。本研究はClinicalTrials.gov, NCT02924688に登録されており、現在完了している。

結果

2016年12月16日から2018年8月31日までの間に、5,185人の患者がスクリーニングされ、2,439人が登録、FF / VI(100 /25μg n= 407; 200 /25μg n= 406)またはFF / UMEC / VI (100/31.25 /25μg n= 405; 100/62.5 /25μg n= 406; 200/31.25 /25μg n= 404; 200/62.5 /25μg n= 408)にランダムに割り当てられた。 3人の患者は誤ってランダムに割り当てられ、解析に含まれていない。ITT集団では、922人(38%)が男性であり、平均年齢は53.2歳(SD 13.1)であり、BMIは29.4(6.6)であった。治療前の患者特徴は、すべての治療群で概ね同様であった。、FF / VI 100 /25μg群と比較し、FF / UMEC / VI 100/62.5 /25μg群がベースラインから改善させた一秒量の最小二乗平均値は110mLであった(95%CI 66–153; p <0.0001)。また、FF / UMEC / VI 200/62.5 /25μg群とFF / VI200 /25μg群との比較では92mL(49–135; p <0.0001)の改善であった。UMEC31.25μgをFF / VIに追加すると、同様の改善が見られた(FF / UMEC / VI 100 / 31.25 /25μg 対 FF/ VI 100 /25μg:96 mL [52–139; p <0.0001]; および 200/31.25 /25μg 対 200 /25μg:82 mL [39–125; p = 0.0002])。これらの結果は、試験薬投与3時間後の一秒量の解析でも裏付けられた。 FF / UMEC62.5μg/ VI群とFF / VI群との比較では中等度および/または重度の増悪発生率の低下は有意ではなかったが(プール分析)、FF100μgを含む治療群よりFF200μgを含む治療群では増悪発生率が低かった。24週目におけるSGRQ合計スコアの平均は、プールされた全治療群において治療前と比較して、臨床的に意味のある最小差である4ポイントを超える改善(減少)を示した;ただし、治療群間に差はなかった。喘息コントロール質問票(ACQ)-7スコアの平均は、プールされた全治療群において治療前から24週目にかけて、臨床的に意味のある最小差である0.5ポイントを超える改善(減少)が観察された。UMECをFF / VIに追加すると、FF / VIと比較して用量依存性にわずかな改善が見られた(プール分析:FF / UMEC 31.25μg/ VI 対 FF / VI、-0.06(95%CI -0.12から0.01; p = 0.094)FF / UMEC 62.5μg/ VI 対 FF / VI、-0.09(-0.16から-0.02、p = 0.0084)。 UMECの追加とは対照的に、治療前の血中好酸球数と呼気NOが高値の患者では、トラフ一秒量と、中等および/または重度増悪の年間発生率に対する高用量FFの影響が増加した。有害事象の発生は、治療群間で類似していた(1つ以上有害事象が発生した患者はは210人 [52%]から258人 [63%]の範囲)。最もよく報告された有害事象は、鼻咽頭炎(51人 [13%] 〜63人 [15%])、頭痛(19 人[5%] 〜 36人 [9%])、上気道感染症(13 人[3%]〜24 [6%])であった。重篤な有害事象の発生率はすべてのグループで類似していた(範囲18 人[4%] 〜 25人 [6%)) 。 3人の死亡が発生し、そのうち1人は試験薬に関連していると考えられた(FF / UMEC / VI 100 / 31.25 /25μg治療群の肺塞栓症)。

解釈

ICS / LABAでコントロール不良の中等症または重症喘息の患者では、UMECを追加すると肺機能が改善されまが、中等度および/または重度増悪の有意な減少には至らなかった。

そのような患者にとって、単一吸入器FF / UMEC / VIは効果的な治療選択肢であり、危険度と有益性のプロファイルは良好であった。 高用量のFFは、特に2型気道炎症のバイオマーカーが上昇した患者において、主に増悪率を低下させた。今回の探索的知見に基づいて、2型炎症のバイオマーカーに基づく喘息治療の効果に関してさらなる確認研究が、治療指針を立てるために必要である。

資金提供

GSK

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

喘息についても言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

院長の著者ページはこちらから

プレゼント原稿が無料でダウンロードできます

HOME

ブログカレンダー

2024年3月
« 2月    
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME