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夜間のみ低酸素血症を示すCOPD患者には酸素療法は不要なのか。(NEJM誌より紹介)

COPD(慢性閉塞性肺疾患)が進行していくと、酸素がうまく体に取り込めず、低酸素血症となります。特に、運動など体を動かすときは体の酸素需要が増加し、低酸素血症になりやすくなります。

 

呼吸不全(酸素不足)になれば、酸素投与を考えることになります。在宅で酸素を使用するためには、著しい低酸素血症をきたすことが、日本の社会保険では求められています。在宅酸素療法が保険適応となる基準は、病状が安定している状態で、安静時の動脈血酸素分圧(PaO2)が55Torr以下(SpO2で88%以下)となっています。安静時にPaO2が56~60Torrであっても睡眠時または運動負荷時に55Torr以下に低下する場合は保険適応と考えられます。つまり、安静時にPaO2が61Torr以上(SpO2が91%以上)ある場合は、酸素投与の保険適応はないことになります。

 

夜間睡眠のみ低酸素血症を呈するCOPD患者がいます。睡眠時無呼吸を合併する場合はCPAP療法などの治療が適応になりますが、睡眠時無呼吸がないにもかかわらず、夜間低酸素となるCOPD患者がいることが知られています。REM睡眠中の低換気や換気応答の低下、換気血流比不均等がその原因と考えられています。低酸素は不整脈や肺高血圧の原因となり、予後(生存率)不良となることから、そのような患者に夜間のみ酸素を投与すれば、予後を改善するのではないかと、研究が行われてきました。しかし、夜間酸素投与に期待できるような結果は得られていません。

 

今回紹介する論文では、睡眠時無呼吸のない、夜間睡眠中に低酸素血症を示すCOPD患者に対し、プラセボコントロールの無作為化試験を行っています。患者を2群に分け、一方には夜間酸素を2〜4L/分、他方には室内空気のみを酸素濃縮装置と似た機械で投与しました。

登録予定600人のうち、243人の患者が登録された時点で、試験は早期中止となりました。中止となった理由は、治療が無効だったからではなく、登録患者が予定通り集まらなったからと記されています。そのため、夜間の酸素療法は有効とも無効とも言えないという、どっちつかずの結論になっています。

 

このような結論でNEJM誌のような権威のある掲載されたのかは不明ですが、低酸素のある患者にプラセボとして空気を投与するという試験は実施困難である(担当医も患者も参加を躊躇する)ことを示しているように思います。無作為化試験の限界なのかもしれません。

 

 

慢性閉塞性肺疾患における夜間酸素療法の無作為化試験

N Engl J Med 2020; 383 : 1129 – 38.

概要

バックグラウンド

長期酸素療法は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および慢性重症日中低酸素血症の患者の生存率を向上させる。しかし、夜間のみの低酸素血症に対する治療として酸素療法が有効かは不明である。

 

方法

今回の二重盲検プラセボ対照無作為化試験において、長期酸素療法の適応がないものの夜間動脈酸素飽和度が低下するCOPD患者に対し、夜間酸素を3〜4年間投与することで死亡率が低下するか、または長期酸素療法が適応となるような病状悪化を防ぐかどうかを調査した。夜間酸素濃度を記録した時間の30%以上で酸素飽和度が90%未満の患者を登録し、、模擬濃縮器(プラセボ)からの室内空気投与群または、夜間酸素投与群に1:1の比率で割り当てられた。主要評価項目は、ITT集団における原因を問わない死亡率および、夜間酸素療法試験(NOTT)基準で定義された長期酸素療法適応率の複合とした。

 

結果

登録予定600人のうち、243人の患者が28のセンターで無作為化された時点で、募集と参加継続が困難なため、募集は早期終了となった。 3年間の追跡調査で、夜間酸素投与群の患者の39.0%(123人中48人)とプラセボ群の患者の42.0%(119人中50人)は、長期酸素療法に関するNOTT定義の基準を満たすか、死亡した(差, ー3.0%ポイント; 95%信頼区間, ー15.1〜9.1)。

 

結論

本試験は検出力が不十分であり、夜間酸素投与がCOPD患者の生存または長期酸素療法への悪化に、プラスまたはマイナスの影響を与えるかは示さない。 (カナダ健康研究所より資金提供あり; INOX ClinicalTrials.gov番号, NCT01044628.)