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喫煙と関連するがんの患者は、がんが治ったら喫煙を再開するリスクが高い

たばこが原因のがんといえば、肺がんを思い浮かべる人が多いと思います。実際は肺がんだけではないのですが、喫煙者が肺がんになったとしましょう。手術など治療の妨げになりますし、入院もするので、タバコをやめる方がほとんどだと思います。

でも、手術が無事終わって普段の生活にもどるとどうでしょうか。しばらくすると、タバコを吸い始めてしまう人がでてきます。まさに、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」ですね。

 

今回紹介する論文では、がんが完治した後、どれぐらいの人が喫煙を再開してしまうのかについて調査しています。また、タバコ関連のがん患者さんと、タバコと関連しないがん患者さんで差があるのか比較しています。

ここで、タバコと関連するがんには、膀胱、血液、子宮頸部、結腸、食道、腎臓、喉頭または気管、白血病、肺、肝臓、口、舌、唇、膵臓、直腸、胃、喉または咽頭、子宮が含まれています。肺がんだけではなく、多種類のがんがタバコが原因として考えられています。ちなみに、タバコに関連しないがんとして、骨、脳、乳房、胆嚢、リンパ腫、黒色腫、卵巣、前立腺、皮膚、軟部組織、精巣、甲状腺がんが含まれています。

 

タバコと関連するがん患者さんが、完治したのち、喫煙をしている確率は、約20%でした。これはタバコと関連しないがん患者さんの約2倍です。

寿命が伸びているので、1回がんになったら終わりではありません。一つのがんが完治しても、別のがんになる可能性があります。一度がんになったら、別のがん予防のため禁煙を続けることが必要です。

 

以下は論文要旨の翻訳です。

 

Smoking Behaviors in Survivors of Smoking-Related and Non–Smoking-Related Cancers

喫煙関連および非関連癌の生存者における喫煙行動

 

JAMA Netw Open. 2020;3(7):e209072.

Original Investigation Public Health

July 2, 2020

 doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.9072

 

疑問

成人の癌生存者の中で、喫煙に関連する癌と関連しない癌で、喫煙行動は異なるのか?

 

調査結果

今回の横断的研究では、18歳以上の26,742人の回答者を対象とした2017年の米国国民健康インタビュー調査で、喫煙と関連しない癌からの生存者と比較して、喫煙と関連する癌からの生存者の方が、現在も喫煙中である率は高かった( 10.63%対19.78%)。 癌と診断された後、喫煙を継続する率は、喫煙に関連しない癌に比べて、喫煙に関連する癌の方が2倍高かった。

 

意味

喫煙と関連しない癌からの生存者と比較して、喫煙と関連する癌からの生存者では、喫煙者であるリスクと喫煙を継続するリスクが高い。

 

概要

重要性

米国では癌からの生存者の人口が急速に増加している。 喫煙は多くの癌に関連している。 しかし、癌生存者の喫煙行動が、癌の種類ーつまり、喫煙関連の癌(SRC)と喫煙と関連しない癌(NSRC)ーによって異なるかどうかは不明である。

 

目的

癌生存者における喫煙率と行動(すなわち、喫煙の継続または中止)を調べ、SRCとNSRCの生存者の間で比較すること。

 

デザイン、設定、および参加者

この研究では、18歳以上の米国市民の世帯調査である、2017年国民健康インタビュー調査を横断的に解析した。 国民健康インタビュー調査は人口ベースであり、米国住民を代表している。 データ分析は2019年6月から10月まで行われた。

 

主な結果と対策

主要評価項目は、癌生存者における現在の喫煙率と、癌の診断後に喫煙を継続したか禁煙した人の割合であった。 副次評価項目は、癌の診断後に喫煙を継続する因子と禁煙する因子であった。

 

結果

本研究には、2017年国民健康インタビュー調査に回答した合計26,742人を対象とした(平均年齢 [SD]、50.97歳 [18.61]; 14,646人が女性 [51.76%])。研究集団の癌患者3,068人 (9.42%) のうち、589人 (19.96%) はSRC生存者、2,297人 (74.50%) はNSRC生存者、168人 (4.96%) はSRCとNSRC両方の生存者、そして残り14人 (0.58%) は癌の種類についての情報がなかった。SRC生存者のうち449人 (54.08%)、NSRC生存者のうち1,412人 (54.30%) が女性であった。 SRC生存者のうち96人(15.69%)およびNSRC生存者のうち151人(7.99%)が45歳未満であった。全体の癌生存者のうち372人(13.16%)が現喫煙者であった。現在も喫煙中の割合は、NSRC生存者(251人 [10.63%] )と比較して、SRC生存者(145人 [19.78%] )の方が高かった。がん診断時に喫煙中であったがん生存者のうち、309人(43.96%)が禁煙に成功したと報告し、372人(56.04%)が喫煙を継続していると報告した。喫煙継続中の人のうち、176人(56.49%)が過去12か月間に禁煙に失敗したと報告した。 がんの診断後、SRC生存者はNSRC生存者と比較して、喫煙継続の確率が高かった(オッズ比 [OR], 2.10; 95%CI, 1.12 – 3.93; P = .02)。 男性(OR, 1.93; 95%CI, 1.05 – 3.57; P = .04)、狭心症(OR, 5.40; 95%CI、1.33 – 21.91; P = .02)、および慢性気管支炎(OR 、2.55; 95%CI、1.05-6.19; P = .04)では喫煙継続の確率が高かったのに対し、ヒスパニック系参加者(非ヒスパニック系白人参加者との比較:  OR, 0.18; 95%CI, 0.05 – 0.68; P = .01)と既婚者(未婚者との比較:  OR, 0.33、95%CI, 0.12 – 0.96; P = .04)では、喫煙継続の確率が低かった。

 

結論と関連性

今回の調査結果により、NSRC生存者と比較して、SRC生存者は癌の診断時に喫煙者であり、その後も喫煙を続けるリスクが高いことが示唆された。 禁煙介入はすべてのがん生存者にとって非常に重要であるが、特にSRC生存者を対象とすべきである。