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自然気胸を外来通院で治療できるか(LANCET誌より紹介)

肺は胸膜と言われる薄い膜で覆われています。息を吸うと肺に空気が取り込まれ、肺が膨らみます。ちょうど風船が空気で膨らむのと似ています。膨らんだ風船に小さな穴を開けると、風船はしぼんでしまいますよね。これと同じように、胸膜に穴が開くと、肺がしぼんでしまいます。肺がしぼんでしまう病気を気胸と呼びます。

 

気胸は、原発性気胸と続発性気胸の大きく2つに分類されます。肺線維症や肺気腫など肺に基礎疾患がある人が気胸を合併した場合は続発性、基礎疾患がない場合は原発性と呼びます。

原発性気胸は、20歳前後の若年男性、痩せ型で高身長の人に多いという特徴があります。肺尖部にブラとよばれる嚢胞が何らかの原因で発生し、風船のように膨らんだ壁の薄い嚢胞が破れると、気胸になります。

 

気胸の治療は、肺から漏れ出した空気を外に吸い出すことです。空気を吸い出して肺を元のように膨らませ、空いた穴が自然に閉じることを待つのが治療の基本です。自然に閉じない時は手術が検討されます。

英国のガイドラインでは、原発性気胸の治療は注射器で漏れた空気をまず吸引することになっています。吸引で効果が不十分であれば、次に胸腔ドレーンを挿入します。吸引のみあれば入院は不要ですが、胸腔ドレーン管理は通常入院が必要になります。

 

今回紹介する論文では、胸に貼り付けられる、小さな新しい装置を用いて気胸の治療を試みています。緊張性気胸を除く原発性気胸患者を対象に、吸引を省略してその装置で気胸治療を開始します。1−2時間経過をみて状態が安定していれば、入院せずにそのまま自宅に帰ってもらい、その後外来で経過をみます。

その結果、発症から30日間における入院日数は中央値0日(範囲0−3日)であり、通常治療群の入院日数中央値4日(範囲0−8日)と比較し、有意に短かったのです。

 

新しい装置は小さく、胸に貼り付けるだけですので、普通に歩行可能ですし、仕事も事務系であればできるでしょう。これが普及すれば、今までの気胸治療の常識が変わるかもしれません。

 

Ambulatory management of primary spontaneous pneumothorax: an open-label, randomised controlled trial

原発性自然気胸の外来治療:非盲検ランダム化比較試験

ARTICLES| VOLUME 396, ISSUE 10243, P39-49, JULY 04, 2020

Published:July 04, 2020

DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31043-6

 

概要

背景

原発性自然気胸は、他の点では健康な若い患者に発生する。最適な治療が定まっておらず、入院がよく長期化する。外来治療の有効性に関するデータは乏しい。標準治療と比較し、外来治療の入院期間と安全性を検証することを目的とした。

方法

この非盲検のランダム化比較試験では、症候性の原発性自然気胸の成人(16〜55歳)が、3年間で英国にある24の病院から登録された。携帯用デバイスによる治療、または標準的ガイドラインに基づく管理(吸引、標準的な胸腔チューブ挿入、またはその両方)による治療のいずれかに、患者はランダムに割り当てられた(1:1)。主要評価項目は、無作為化後30日間までの再入院を含む入院期間の合計とした。利用可能なデータを持つ患者が一次解析に含まれ、割り当てられたすべての患者は安全解析に含まれた。この試験は、国際標準ランダム化臨床試験番号ISRCTN79151659に前向きに登録された。

調査結果

2015年7月から2019年3月の間にスクリーニングされた776人の患者のうち、236人(30%)がランダムに外来治療(n = 117)と標準治療(n = 119)に割り当てられた。 30日目時点における入院期間中央値は、データ入手可能な114人の外来治療患者(0日 [IQR 0 – 3])の方が、データ入手可能な113人の標準治療患者(4日 [IQR 0 – 8 ]; p <0.0001; 中央値の差 2日[95%CI 1 – 3])よりも有意に短かった。 236名の患者のうち110名(47%)に有害事象を認め、外来治療群では117名中64名(55%)、標準治療群では119名中46名(39%)に認めた。重篤な有害事象を認めた14例は、すべて外来治療を受けた患者で発生し、そのうち8例(57%)は治療介入に関連しており、気胸の拡大、無症候性肺水腫、デバイスの誤動作や漏出、脱落であった。

 

解釈

原発性自然気胸の外来治療は、最初30日間の入院期間(再入院を含む)を大幅に短縮したが、有害事象が増加していた。今回の結果はは、治療介入を要する人患者に携帯型デバイスを使用して、原発性自然気胸を外来管理できることを示唆している。

資金提供

英国国立健康研究所