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喘息の重症度によって、CTで観察できる気管支の数が異なる(AJRCCM誌より紹介)

[2020.08.02]
最近のCTスキャンの進歩は著しく、昔は分からなかったような細かい影や異常も捉えられるようになってきています。数年前までCTで心臓を撮るということは考えられなかったのですが、冠動脈CTといって心臓の栄養血管である冠動脈の内腔をCTで評価することも一般的となっています。冠動脈の硬化が進んでいないか、動脈が狭窄していないか、冠動脈造影検査のような大変な検査をしなくてもCTのような簡便な検査でわかるようになってきています。
 
以前のCTは一枚一枚撮影するために時間がかかりました。そのため、肺はCTを一枚撮る毎に息を吸ってしっかり息を止めることが必要でした。現在では息を10−20秒止めれば、肺全体を一気に撮影することができます。そして、解像度も格段に上がり、小さく細い気管支や血管を観察することができるようになりました。肺癌や肺炎、肺結核、肺気腫など肺の病気を見つけることが肺CTを撮る主な目的だったのですが、最近は気管支炎や気管支拡張症、COPDなど気管支の病気をCTで評価することも多くなっています。
 
今回紹介する論文では、喘息の重症度をCTで評価しようと試みています。COPD(慢性閉塞性肺疾患)の病態は慢性的に気管支が狭窄閉塞することであり、すでにCTでCOPDの気管支を評価する研究がなされています。それを喘息でもできないかを調べています。
 喘息は発作(増悪)をきたすと、気管支内腔が細くなり、セキやタン、喘鳴といった症状となります。発作を起こしているときにCTを撮れば、気管支は狭く、気管支壁は肥厚し、換気も悪くなっていることが確認できます。
 
軽症の喘息患者さんでは、発作の治療をすれば、そのような気管支内腔や壁肥厚などの変化は元に戻ります。しかし、喘息のコントロールが不良となり重症化すると、発作が改善しても気管支の変化は元に戻りません(=リモデリング)。
 リモデリングは今まで病理組織(顕微鏡)レベルの話だったのですが、このようにCTで簡単に調べられるようになったということに、隔世の感があります。
 
 

Is Computed Tomography Airway Count Related to Asthma Severity and Airway Structure and Function?

喘息の重症度によって、CTで観察できる気管支の数が異なる

2020 Apr 15;201(8):923-933.

概要

理論的根拠:

喘息の患者では、X線コンピューター断層撮影(CT)において気道壁肥厚と気道閉塞の証拠が得られているが、CTで観察できる気管支の総数と喘息重症度との関係は不明でありる。

目的:

喘息においてCTでの合計気道数(TAC)を測定すること、喘息重症度、気道の形態、肺機能、および磁気共鳴画像(MRI)での換気との関係を評価すること。

方法:

試験参加者は、気管支拡張薬投与後の吸気CT、気管支拡張薬投与前および気管支拡張薬投与後の呼吸機能検査、および過分極³He MRI検査を受けた。 CTでのTACは、区域気管支樹内の気道数の合計として定量化され、気道壁面積の割合(WA%)と内腔面積が測定された。 MRIでの換気異常は、換気欠損率として定量化された。

測定値と主な結果:


評価した70人の参加者のうち、Global Initiative for Asthma (GINA)のステップ1〜3の喘息患者は15人、GINAステップ 4の患者が19人、GINA ステップ5が36人であった。 GINA 1〜3と比較して、GINA 4(P = 0.03)およびGINA 5(P = 0.045)でTACは有意に減少していた。終末気道の内腔閉塞は、参加者70人中5人(GINA 4が2人、 GINA 5が3人)に存在した。70人のうち69人において亜区域気管支がCTで見えない状態か欠落しており、欠落している亜区域支数で最も多い数は10であった。欠落している亜区域気管支が10以上の患者は、10未満の患者よりもWA%(P <0.0001)、内腔面積(P <0.0001)、および換気欠損領域の割合(P = 0.03)が悪かった。多変量モデルでは、TAC(標準化回帰係数= 0.50; P = 0.001)はFEV1(R² = 0.27; P = 0.003)を予測する独立因子であった。別のモデルでは、TAC(標準化回帰係数= -0.53; P <0.0001)は、気道WA%(R² = 0.32; P = 0.0001)を予測する独立因子であった。

結論:


TACは、喘息重症度が高い患者では有意に減少し、気道壁肥厚と換気障害に関連していた。軽症喘息よりも重症喘息において気道数が少ないということは、喘息における気道病変の理解が困難にとなる。臨床試験はwww.clinicaltrials.govに登録された(NCT02351141)。

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

喘息について言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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