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がんになると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスクはどれぐらい高いのか(LANCET誌の報告)

[2020.06.28]

 がんがあると、新型コロナウイルス感染のリスクが高いと言われます。日本では、乳がんであった岡江久美子さんが新型コロナウイルスに感染し亡くなられたことが報道され、やはりそうだったのかと思われました。がん患者さんでは抗がん剤やステロイドの使用で免疫力が低下し、またがんがあること自体で免疫力が低下します。また、ニボルマブ(オプジーボ®)などの免疫チェックポイント阻害薬の使用により、感染に対する免疫応答が増強される可能性もあります。 さらに、検査や治療を受けるため医療機関に通院することで、新型コロナウイルスに接触する機会が増えます。このように考えると、健常人と比較すると、がん患者さんの方がウイルスに感染しやすく、重症化しやすいのではないかと思われます。

 

  • 新型コロナウイルスに感染したがん患者928人を解析

今回紹介する論文では、新型コロナウイルスに感染したがん患者928人を集め、リスクが高くなる特徴はなにかを解析しています。

解析時点で13%の患者が死亡しており、合併症の数が多い患者、活動性のがんをもつ患者、全身状態不良(ECOG-PS2以上)の患者は死亡リスクが高いことを報告しています。

 

  • 以下は論文要旨です

ARTICLES| VOLUME 395, ISSUE 10241, P1907-1918, JUNE 20, 2020

The Lancet Journal

 

Clinical impact of COVID-19 on patients with cancer (CCC19): a cohort study

癌患者に対するCOVID-19の臨床的影響(CCC19):コホート研究

 

Published:May 28, 2020

DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31187-9

 

概要

背景

COVID-19に感染した癌患者に関するデータは不足している。本研究では、COVID-19に感染した癌患者コホートの転帰の特徴を明らかにし、死亡と重症化を規定する可能性のある予後因子を特定する。

 

方法

今回のコホート研究では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染が確認された、現在の悪性腫瘍または既往のある18歳以上の患者の匿名化データを収集した。 から2020年3月17日から4月16日の間にベースラインデータが追加された、米国、カナダ、およびスペインにおけるCOVID-19およびCancer Consortium(CCC19)データベースを使用した。ベースラインにおける臨床状態、投薬状況、癌の診断と治療、およびCOVID-19疾患の経過に関するデータを収集した。主要評価項目は、COVID-19の診断から30日以内の死因を問わない全死亡率であった。年齢、性別、喫煙状態、肥満について部分調整されたロジスティック回帰分析を使用して、転帰と可能性のある予後因子との関連を評価した。本試験はClinicalTrials.gov、NCT04354701に登録され、現在進行中である。

 

調査結果

研究期間中にCCC19データベースに入力された1,035人の記録のうち、928人の患者が我々の解析適応基準を満たした。年齢中央値は66歳(IQR 57〜76)、279人(30%)は75歳以上、そして468人(50%)の患者は男性であった。最も頻度の高い悪性腫瘍は乳房(191人 [21%])と前立腺(152人 [16%])であった。 366人(39%)の患者は抗がん治療を現在受けており、396人(43%)は活動性の(測定可能な)がんを患っていた。解析の時点(2020年5月7日)では、121人(13%)の患者が死亡していた。ロジスティック回帰分析では、部分調整後、30日死亡率の上昇に関連する独立因子は以下の通りであった。年齢上昇(10歳あたり;部分調整オッズ比 1.84, 95%CI 1.53 – 2.21)、男性(1.63、1.07 – 2.48)、喫煙状況(既喫煙歴 vs 非喫煙歴:1.60、1.03 – 2.47)、併存症の数(2つ vs なし:4.50、1.33 – 15.28)、ECOGのパフォーマンスステータスが2以上(PS 2 vs 0/1:3.89、2.11 – 7.18)、活動性の癌(増悪傾向 vs 寛解状態:5.20、 2.77 – 9.77)、およびアジスロマイシンとヒドロキシクロロキンの併用療法(vs どちらも投与なし:2.93、1.79 – 4.79; 適応による交絡は除外できず)。米国北東部居住と比較すると、カナダ居住(0.24、0.07 – 0.84)または米国中西部居住(0.50、0.28 – 0.90)は全死因による30日以内の死亡率減少と関連していた。人種や民族、肥満の状態、がんの種類、がん治療法の種類、最近の手術歴は死亡率と関連していなかった。

 

解釈

COVID-19に感染したガン患者では、30日以内の全死亡率が高く、一般的な危険因子およびがん患者特有の危険因子が死亡と関連していた。個々のがん治療を継続できるのかを含め、COVID-19がガン患者の転帰に与える影響をもっと理解するためには、もっと長期のフォローアップが必要である。

資金提供 アメリカ癌学会、国立衛生研究所、およびホープ癌研究財団。

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

新型コロナについて言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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