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新型コロナウイルス感染症1,099例の臨床的特徴(NEJM誌より)

 2020年4/30付けのNEJM誌に、1,099人という比較的多数の症例報告が掲載されていましたので、紹介します。

 

 2019年12/11から2020年1/29まで間に、中国の病院に入院しており、検査(RT-PCR)で新型コロナウイルス(=SARS-COV-2)が確認された患者が対象となっています。

 

  •  以下に本文から抜粋して翻訳します。

「2020年1月29日の時点で、中国552の施設に入院していた7,736人のCovid-19患者のうち、1,099人(14.2%)の患者の臨床症状と転​​帰に関するデータを取得した。ーーー 発熱は入院時には患者の43.8%に発熱を認めたが、入院後には88.7%の患者に発熱を認めるようになった。2番目に多い症状は咳(67.8%)であり、悪心や嘔吐(5.0%)および下痢(3.8%)はまれであった。」

 逆に言うと、入院時に発熱のない患者は半分以上おり、入院後も約10%の患者は発熱しなかったことになります。

 

「Covid-19の入院時の重症度は、926人が非重症、173人が重症に分類された。重症患者の年齢は、非重症患者の年齢よりも中央値で7歳上であった。さらに、重症患者では、非重症患者よりも併存疾患のある患者が多かった(38.7%対21.0%)。ーーー 入院時に行われた975人のCTスキャンのうち、86.2%が異常所見を示した。胸部CTで最も一般的な異常所見は、スリガラス様陰影(56.4%)と両側斑状影(51.8%)であった。ーーー 非重症患者877人中157人(17.9%)および重症患者173人中5人(2.9%)では、X線やCTに異常が見られなかった。」

 高齢や併存疾患があると重症になりやすいと言われています。しかし、その差は7歳、38.7-21.0=17.7%であり、それ程大きいものではないようです。

 そして、非重症の18%、重症でも3%の患者に、入院時には肺炎像を認めなかったようです。

 

「1099人の患者のうち、主要複合評価項目であるイベントは67人(6.1%)で発生し、5.0%がICUに入院、2.3%が侵襲的人工呼吸を受け、1.4%が死亡した。ーーー 入院中に、ほとんどの患者(91.1%)が医師から肺炎の診断を受け、続いてARDS(3.4%)とショック(1.1%)と診断されていた。 重症の患者は、重症でない患者よりも医師が診断した肺炎の発生率が高かった(99.4%対89.5%)重症患者では、非重症患者よりも医師の診断による肺炎の発生率が高かった(99.4%vs 89.5%)。ーーー Covid-19という用語は、明らかな放射線画像の異常を示さなくても、症状があり、検査でウイルスが確認された患者に適用されている。患者の8.9%では、ウイルス性肺炎の発症前、またはウイルス性肺炎が発症しなくて、SARS-CoV-2感染が検出されており、疾患スペクトルをさらに理解することがが必要である。」

 COVID-19による入院患者の死亡率は中国では1.4%でした。入院時には肺炎像がなくても、入院中には91%の患者が肺炎と診断されています。逆に、入院するような新型コロナウイルス感染症でも、10%弱の患者は肺炎を起こさなかったと言えます。つまり、「COVID-19=新型肺炎」ではないことに注意する必要はありそうです。

 

 下の図は、典型的な軽症肺炎、重症肺炎のCT画像の経過です。重症患者では3日で急速に悪化しているのが分かります。

 

  • 以下は論文要旨です

April 30, 2020
N Engl J Med 2020; 382:1708-1720
DOI: 10.1056/NEJMoa2002032

背景

2019 年 12 月に中国の武漢で新型コロナウイルス感染症(Covid-19)が発生して以来、中国全体に急速に広まり、 感染患者の臨床的特徴に関する情報が必要とされている。

方法

中国本土の30の省、自治区、地方自治体にある552 病院から、2020年1月29日までに検査により確認されたCovid-19の患者1,099例のデータを抽出した。主要な複合評価項目は集中治療室(ICU)への入室、人工呼吸器の使用、または死亡とした。

結果

患者の年齢中央値は 47 歳であり、41.9%が女性であった。主要複合評価項目は67例(6.1%)で発生し、そのうち 5.0%がICUに入室し、2.3%が侵襲的人工呼吸管理を受け、1.4%が死亡した。野生動物と直接接触したことのある患者は1.9%のみであった。武漢に居住していない患者のなかでは、72.3%の患者に武漢に住んている人との接触歴があり、31.3%の患者は武漢に滞在したことがあった。頻度が特に高い症状は発熱(43.8%が入院時、88.7%が入院中)と、咳嗽(67.8%)であった。下痢は稀であった(3.8%)。潜伏期間の中央値は 4 日(四分位範囲, 2~7日)であった。入院時において最もよくみられた画像所見は、胸部CTでのすりガラス様陰影(56.4%)であった。非重症患者877人中157人(17.9%)と、重症患者173人中5人(2.9%)では、 X 線写真やCT で異常を認めなかった。83.2%の患者で入院時にリンパ球減少を認めた。

結論

現在の流行の最初の2ヵ月間に、Covid-19は中国全体に急速に拡大し、様々な程度の疾患を引き起こした。発熱のない患者がしばしばみられ、また画像所見に異常がない患者も多くみられた(中国国家衛生健康委員会などから資金提供あり)