HOME > 院長ブログ > 院長による医学論文紹介 > 院長による論文紹介(COVID-19) > 重症の新型コロナウイルス患者(Covid-19)に対するレムデシビルは有効かもしれない(NEJM誌より)

重症の新型コロナウイルス患者(Covid-19)に対するレムデシビルは有効かもしれない(NEJM誌より)

 当初、HIV治療薬であるロピナビル+リトナビルが新型コロナウイルスに有効ではないかといわれていました。しかし、その後、ランダム化比較試験によってCOVID-19にはロピナビル+リトナビルの効果が期待できないことが、3月18日のN Engl J Med誌( DOI: 10.1056/NEJMoa2001282.)で報告されました。

 

 4月10日のN Engl J Med誌にて、エボラ出血熱の治療薬として開発されていたレムデシビルが、新型コロナウイルスにも効果が期待できるとして報告されています。しかし、ロピナビル+リトナビルで行われたランダム化比較対照試験とは異なり、今回のレムデシビルは少数のコホート研究であり、研究方法が全く異なります。重症患者の68%で酸素化の改善が観察されたとする結果は期待できるものですが、現在行われているランダム化比較試験の結果次第では有効性が否定される可能性があり、注意が必要です。

 

 以下は、論文のIntroductionから抜粋して翻訳しました。

「ーーーCovid-19 (新型コロナウイルス感染症)の症状は、無症候から肺炎、生命にかかわる合併症、つまり急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、多臓器不全、そして最終的には死亡まで、幅広い。高齢者および、呼吸器系または心血管系の既往がある患者は、重篤な合併症を起こすリスクが最も高いようである。効果が立証された治療法がない中、現在の治療は侵襲的および非侵襲的な酸素療法と抗菌療法など支持療法で構成されている。さらに、多くの患者が抗レトロウイルス薬や抗寄生虫薬、抗炎症化合物、回復期血漿などの適応外または例外的治療を受けている。

 レムデシビルは、フィロウイルス(エボラなど)やコロナウイルス(SARS-CoV、中東呼吸器症候群コロナウイルス[MERS-CoV]など)を含む複数のウイルスに対して、広域スペクトルで活性を示し、これらコロナウイルスの前臨床モデルで予防および治療効果を示した。in vitro試験では、レムデシビルがSARS-CoV-2(=新型コロナウイルス)に対して活性を有することも示されている。健康ボランティアと急性エボラウイルス感染症患者を含む約500人に投与した経験によると、レムデシビルは良好な臨床安全性プロファイルを持っているようである。ーーー」

以下は論文の考察から抜粋して翻訳しました。

「現在のところ、Covid-19患者に対し効果が証明されている治療法はない。今回の予備的な報告では、レムデシビルで治療された少数の重症Covid-19患者の臨床転帰について示した。現在進行中のいくつかの無作為化比較試験の結果がでれば、Covid-19に対するレムデシビルの安全性と有効性に関するもっと有用な証拠がまもなく示されるはずであるが、今回の例外的使用プログラムで観察された結果は現在入手可能な最良のデータである。具体的には、患者の68%で酸素化の改善が観察され、中央値18日間の追跡期間で全体の死亡率は13%であった。

 最近報告されたロピナビル+リトナビルのランダム化比較試験では、 Covid-19による入院患者を対象とし、28日死亡率は22%であった。その試験では199人の患者のうち、治療開始前に侵襲的人工呼吸を受けていた患者は一人しかいなかったことに注意することが重要でである。症例報告およびコホート研究、主に中国からの報告では、集中治療室への入院か侵襲的人工呼吸、またはその両方が必要な重症例で17〜78%の死亡率が報告されている。例えば、 201人の患者が中国武漢で入院し、死亡率は全体で22%、侵襲的人工呼吸を受けた患者の死亡率は66%(67人中44人)であった。単純比較すると、この患者集団における疾患の重症度を考慮すると、今回のレムデシビル例外的使用のコホートで観察された13%という死亡率は注目に値する。ただし、この例外的治療プログラムに登録された患者と、これまでの研究で報告された患者と直接比較することはできない。たとえば、レムデシビルで治療された患者の64%はベースラインで侵襲的人工呼吸を受けていた(ECMOを受けていた8%を含む)が、このサブグループの死亡率は18%であった(非侵襲的酸素サポートを受けた患者の死亡率5.3%と比較して)。そして大多数の患者は男性(75%)、60歳以上で、併存疾患をもっていた。ーーー」

 

以下は論文要旨の翻訳です。

N Engl J Med. April 10, 2020
DOI: 10.1056/NEJMoa2007016

概要

背景

ヌクレオチド類似体のプロドラッグであるレムデシビルは、ウイルスRNAポリメラーゼを阻害し、SARS-CoV-2に対してin vitroでの活性を示している。

方法

SARS-CoV-2の感染によって引き起こされるCovid-19で入院した患者に、例外的使用としてレムデシビルを提供した。患者はSARS-CoV-2感染が確認されており、室内気での酸素飽和度が94%以下であったか、酸素吸入を受けていた。 1日目に200 mgを静脈内投与した後、残りの9日間は毎日100 mgのレムデシビルを計10日間投与した。2020年1月25日から2020年3月7日までにレムデシビルを投与され、少なくとも1日間の臨床情報をもつ患者のデータに基づいて報告する。

結果

レムデシビルを少なくとも1回投与された61人の患者のうち、8人のデータは解析できなかった(7人の患者には治療後のデータがなく、1人には投与量にエラーがあった)。データが解析された53人の患者のうち、22人は米国、22人はヨーロッパまたはカナダ、9人は日本にいた。治療前の時点で、30人の患者(57%)が人工呼吸療法中であり、4人(8%)が体外膜型人工肺(ECMO)を受けていた。追跡期間中央値 18日間において、36人の患者(68%)の酸素化に改善があり、人工呼吸療法中であった30人中17人(57%)が抜管された。計25人(47%)の患者が退院し、7人(13%)が死亡した。死亡率は、侵襲的な人工呼吸を受けている患者では18%(34人中6人)、人工呼吸を受けていない患者では5%(19人中1人)であった。

結論

重症Covid-19に対し例外的使用のレムデシビルで治療された入院患者コホートでは、53人の患者のうち36人(68%)に臨床的改善が観察された。有効性の判定には、現在進行中であるレムデシビル治療のランダム化プラセボ対照試験が必要である。 (ギリアド・サイエン社より資金提供あり)