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ガンに対して代替医療しか受けないと、死亡リスクが2.5倍に上昇(JNCI誌より)

 2020/2/16の当ブログで紹介した論文では、補完医療が通常医療にくらべガン患者の生存率を下げる可能性があることを示しました。それは、補完医療を受けた患者さんの中には、通常のガン治療を拒否した人が多かったことが要因と考えられました。
 
 今回紹介する論文は前回と同じ著者らが書いたものであり、補完医療ではなく代替医療に着目しています。補完医療では少なくとも一つの通常ガン治療も受けるのに対し、代替医療では通常のガン治療を全く受けないという違いがあります。
 検証した結果、通常のガン治療を受けた患者さんと比較して、代替医療しか受けなかった患者さんは死亡リスクが2.5倍であり、下記の生存曲線でみても明らかに生存率が低下していました。
 標準的なガン治療を全く受けないわけなので、生存率が下がるのは我々医師からみれば当然の結果です。しかし、教育レベルや社会的経済的地位の高い方が多い、代替医療を受けるガン患者さんにとっては、信じがたい結果なのではないでしょうか。がんの標準治療と呼ばれているものは、多数の患者さんで治療効果および有害事象(副作用)が解析され、科学的証拠がしっかりしています。補完/代替医療の多くは、少数の患者さんでの治療効果しか示していませんし、有害事象もしっかり拾い上げていません。補完/代替医療の中から科学的証拠を示すものが今後でてくる可能性は否定できませんが、あくまで標準治療を行った上で補完医療をうけるようにした方がよいでしょう。
 
JNCI: Journal of the National Cancer Institute, Volume 110, Issue 1, January 2018, Pages 121–124, https://doi.org/10.1093/jnci/djx145

概要

 がん患者に対する代替医療(AM)がどのように利用され、効果がどの程度あるのか入手可能な情報は限られている。

 がんの単独治療としてAMを選択した、非転移性の乳がん、前立腺がん、肺がん、大腸がん患者であり、化学療法、放射線療法、手術、および/またはホルモン療法として定義される従来のがん治療(CCT)を受けていない281人を特定した。 多変量ロジスティック回帰の独立共変量の中で、乳がんまたは肺がん、高い社会経済的地位、西部または太平洋の山岳地域在住、病期II期またはIII期、併存疾患スコア低値がAM利用可能性の増加と関連していた。

 Cox比例ハザード回帰の2:1マッチング(CCT = 560例およびAM = 280例)を行ったところ、AM利用はCCT全患者と比較して、死亡リスクと独立して関連していた(ハザード比[HR] = 2.50, 95%信頼区間[ CI] = 1.88~3.27)。サブグループでは乳がん(HR = 5.68, 95%CI = 3.22~10.04)、肺がん(HR = 2.17, 95%CI = 1.42~3.32)、および結腸直腸がん(HR = 4.57, 95%CI = 1.66~12.61)でAM利用は死亡リスクが上昇していた。まれではあるが、治癒可能ながんに対してCCTを行わずAMのみを利用すると、死亡リスクが高くなる。