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中国武漢での2019年新規コロナウイルス(COVID-19)による肺炎入院患者138人の臨床的特徴(JAMA誌より)

 2/7付けのJAMA誌にて、中国武漢での新型コロナウイルス肺炎138例の報告がありました。

 現在最も我々が知りたいことは、どういう人が新型コロナウイルスに感染すると重症化するのかではないかと思います。本論文では集中治療室(ICU)に入室したかどうかで重症かどうかを分類しています。通常、重症肺炎になると呼吸不全が進行するので、呼吸管理のためICUへの入室が必要となります。

 

 患者背景についての比較を、本文より抜粋して翻訳します。

「ICUでの治療を受けなかった患者(102人)と比較して、ICU治療を必要とした患者(36人)は有意差をもって高齢であった(年齢中央値 66歳 [IQR, 57-78] 対 51歳 [IQR, 37-62 ]; P < .001)。

そして、ICU患者では併存疾患が多い傾向にあり、高血圧(58.3% 対 21.6%)、糖尿病(22.2% 対  5.9%)、心血管疾患(25.0% 対 10.8%)、脳血管疾患(16.7% 対 1.0%)をもっている割合が多かった。非ICU患者と比較して、ICU患者は咽頭痛、 呼吸困難、めまい、腹痛、食欲不振を訴えることが多かった。」

 

 次に、患者入院時のバイタルサイン、検査データの比較です。

「心拍数、呼吸数、および平均血圧は、ICU患者と非ICU患者で差はなかった。 (中略) ICU患者では、白血球数と好中球数が増加しており、Dダイマー、クレアチンキナーゼ、クレアチンが高値を示し、入院時検査所見に多くの違いがあった。」

 

 そして、入院後の検査結果の推移を生存者と非生存者とで比較しています。

「入院中、ほとんどの患者は末梢血リンパ球が著明に減少し、非生存者では時間とともにリンパ球減少がもっとひどくなった。生存者よりも非生存者の方が 白血球数と好中球数が増加していた。 D-ダイマーは、生存者よりも非生存者の方で高値であった。 同様に、疾患の進行により病状が悪化すると、死亡前に血中尿素およびクレアチニンレベルが徐々に高くなった。」

 

 論文考察でも述べているように、今回解析された中にはまだ入院中の患者がいることに注意が必要です。つもり、本論文では非ICU患者でもその後ICUに入室して、死亡された患者がいるかもしれません。

「2020年2月3日現在、85人の患者(61.6%)がまだ入院している。 合計47人(34.1%)が退院し、6人(4.3%)が死亡した。 ICUに入室した36人のうち、11人はまだICUにおり、9人は自宅に退院し、10人は一般病棟に移送され、6人は死亡した。」

 

以下は論文要旨の翻訳になります。

Published Online: February 7, 2020.

doi:10.1001/jama.2020.1585

キーポイント

質問:中国武漢における2019年新規コロナウイルス(2019-nCoV/COVID-19)による肺炎(NCIP)の入院患者の臨床的特徴とは

所見:単一施設における一連のNCIP患者138人では、26%の患者が集中治療室への入院を必要とし、4.3%が死亡した。 41%の患者で2019-nCoV/COVID-19がヒトからヒトの病院関連の感染が推定された。

意味:中国武漢における今回の一連の症例では、NCIPは病院関連の感染と推定されることが多く、患者の26%が集中治療室での治療を必要とし、死亡率は4.3%であった。

 

概要

重要性:2019年12月、中国の武漢で新規コロナウイルス(2019-nCoV)肺炎(NCIP)が発生した。 症例数は急速に増加しているが、罹患患者の臨床的特徴に関する情報は限られている。

目的:NCIPの疫学的および臨床的特徴を説明する。

デザイン、設定、参加者:2020年1月1日から1月28日までに中国武漢にある武漢大学中南病院でNCIPが確認された、単一施設での後方視的に一連の入院患者138人。 フォローアップの最終日は2020年2月3日であった。

露出:文書化されたNCIP。

主な結果と対策:疫学、人口統計、臨床、検査、放射線および治療のデータが収集され、解析された。重症患者と非重症患者の結果を比較した。医療従事者または入院患者が同じ病棟で集団感染し、可能性のある感染源を追跡できる場合、病院関連の感染と推定された。

結果:NCIPによる入院患者138人のうち、年齢中央値は56歳(四分位範囲, 42〜68歳; 範囲, 22〜92歳)であり、75人(54.3%)は男性であった。病院関連感染は、医療従事者の患者(40人 [29%])および入院患者(17人 [12.3%])が推定された感染経路として病院関連感染が疑われた。よくみられる症状として、発熱(136人 [98.6%])、疲労(96人 [69.6%])、および乾性咳嗽(82人 [59.4%])を認められた。リンパ球減少(リンパ球数, 0.8×109 / L [四分位範囲{IQR}, 0.6-1.1])が97人の患者(70.3%)にみられ、80人の患者(58%)でプロトロンビン時間(PT)の延長(13.0秒[IQR, 12.3-13.7])、55人の患者(39.9%)で乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)の上昇(261 U / L [IQR, 182-403])がみられた。胸部CTスキャンでは、すべての患者の肺に両側斑状影またはスリガラス状濃度上昇を示した。ほとんどの患者で抗ウイルス薬(オセルタミビル, 124人 [89.9%])が投与され、多くの患者で抗菌薬(モキシフロキサシン, 89人 [64.4%]; セフトリアキソン, 34人 [24.6%]; アジスロマイシン, 25人 [18.1%])、グルココルチコイド薬(62 人[44.9%])が投与された。36人(26.1%)の患者は、急性呼吸促迫症候群(22人 [61.1%])、不整脈(16人[44.4%])、およびショック(11 人[30.6%])などの合併症のため、集中治療室(ICU)に移された。 最初の症状出現から、呼吸困難出現までの期間は中央値5.0日、入院までの日数は中央値7.0日、ARDS発生までは中央値8.0日であった。 ICUで治療された患者(n = 36)は、ICUで治療されなかった患者(n = 102)と比較して、高齢であり(中央値, 66歳vs 51歳)、併存疾患(26人 [72.2% ] vs 38人 [37.3%])、呼吸困難(23人 [63.9%] vs 20人 [19.6%])、食欲不振(24人 [66.7%] vs 31人 [30.4%])を認める可能性が高かった。ICUの36症例のうち、4人(11.1%)が高流量酸素療法を受け、15人(41.7%)が非侵襲的換気を受け、17人(47.2%)が侵襲的換気を受けた(4人はECMO[体外式膜型人工肺]に切り替えられた)。 2月3日現在、47人の患者(34.1%)が退院し、6人が死亡したが(全体死亡率, 4.3%)、残りの患者は入院中である。軽快退院した患者(n = 47)では、入院期間中央値は10日間(IQR, 7.0-14.0)であった。

結論と関連性:中国武漢でNCIPと確定された入院患者138人の単一施設一連の症例では、2019-nCoVの病院関連感染が41%の患者で疑われ、26%の患者がICU治療を受け、死亡率は4.3%であった。