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補完医療を受けるガン患者は生存率が低い可能性

 今回紹介する論文は2018年に発表されたもので、最新医学論文とは言えないものですが、重要と思われたので紹介します。

 まず、補完医療、代替医療とは何かについて、日本補完代替医療学会のHPページから抜粋して引用します。補完代替医療とは、「現代西洋医学領域において、科学的未検証および臨床未応用の医学・医療体系の総称」と定義されています。「具体的には、中国医学(中薬療法、鍼灸、指圧、気功)、インド医学、免疫療法(リンパ球療法など)、薬効食品・健康食品(抗酸化食品群、免疫賦活食品、各種予防・補助食品など)、ハーブ療法、アロマセラピー、ビタミン療法、食事療法、精神・心理療法、温泉療法、酸素療法、等々」が含まれます。

 補完医療とは通常の医療を補うように上記治療を追加して受けること、代替医療とは通常の医療を受けずに上記治療のみを受けることを示します。

 今回の論文では、通常のガン治療を少なくとも一つを受け、補完医療を受けた患者(CM)と、通常のガン治療のみ受けた患者(CCT)で生存率に相違があるかを後ろ向きのコホート研究で検証しています。例えば、手術を行った後に化学療法を受けるのが通常のガン治療(CCT)だとすれば、術後化学療法をうけずに補完医療のみを受けたり、術後化学療法と補完医療の両者を受けたりすればCM群に入ることになります。

 女性、比較的若い、乳がん、大腸がん、教育レベルが高い、比較的裕福な人が補完医療を受ける傾向にありました。5年生存率は補完医療を受けなかった群では86.6%、補完医療を受けた群では82.2%でした。死亡リスクは補完医療を受けた群では1.70倍(単変量解析)、2.08倍(多変量解析)高くなりました。補完医療を受けた人の中には通常のガン治療を拒否する人が多いため、生存率が下がり死亡リスクが上昇したと考えられます。

 補完医療の効果を否定する結果ではありませんので、標準的なガン治療を受けた上でプラスアルファーを期待して補完医療を受けるかどうかを決めるべきだと思います。瞑想やヨガなどはガン治療にともなうストレスを和らげ、QOLを向上させる効果があるかもしれません。しかし、その効果を科学的に証明することは困難です。

 

JAMA Oncol. 2018;4(10):1375-1381.

Published Online: July 19, 2018. doi:10.1001/jamaoncol.2018.2487

キーポイント

質問:どのような患者ががんの補完医療を利用するのか?使用に関連する患者の特性は何ですか?また、補完医療と、治療順守の状況および生存期間に関連はあるのか?

 

結果: 1,901,815名の患者を対象とした今回のコホート研究では、補完医療の利用と数種類の要因に関連があった。補完医療を利用すると通常のがん治療を拒否しやすく、補完医療を利用しなかった患者と比較して死亡リスクが2倍大きくなった。

 

意義:補完医療を受けた患者は、その他の通常のがん治療を拒否する傾向があり、補完医療をうけない場合よりも死亡リスクが高くなった。ただし、この生存率の違いは、推奨される通常のがん治療をすべて遵守するかによって左右された可能性がある。

要旨

重要性:補完医療(CM)および従来のがん治療(CCT)の遵守率、CMを受けなかった患者と比較しCMを受けたがん患者の全生存期間に相違があるかについて情報はあまりない。

 

目的:CMの有無でCCTを受けたがん患者の全生存率を比較し、CMの有無でCCTを受けた患者の治療順守率と特徴を比較する。

 

研究デザイン、設計、設定、および参加者:

今回の後方視的観察研究では、2004年1月1日から2013年12月31日の間に非転移性の乳がん、前立腺がん、肺がん、または大腸がんと診断された、全米のがん認定センターにある1500の委員会から1,901,815名の患者に関する国立がんデータベースのデータを使用した。年齢と臨床病期、チャールソン・デヨー合併症指数、健康保険の種類、人種/民族、診断された年、がん種について患者を一致させた。統計解析は、2017年11月8日から2018年4月9日まで実施された。

 

暴露:手術および/または放射線療法、化学療法、ホルモン療法として定義されるCCTモダリティを少なくとも一つに加えて、「非医療従事者による未検証の癌治療」をCMとした。

 

主な結果と測定項目:全生存期間および治療順守率、患者の特徴。

 

結果:全コホートは、がん患者1,901,815人(CM群258人、対照群1,901,557人)で構成された。マッチング後の主な解析では、258人の患者(女性199人と男性59人、平均年齢56歳[四分位範囲, 48〜64歳])がCM群、1,032人の患者(女性798人と男性234人、平均年齢56歳[四分位範囲, 48〜64歳]))が対照群であった。CMを選択した患者は、CCTの開始が遅れはしなかったが、手術の拒否率(7.0%[258 人中18人] 対 0.1%[1031人中一人]; P <.001)、化学療法の拒否率(34.1%[258人中88人]対3.2%[1032人中33人]; P <.001)、放射線療法の拒否率(53.0%[200人中106人]対2.3%[711人中16人]; P <.001)、およびホルモン療法の拒否率(33.7%[258人中87人]対2.8%[1032人中29人]; P <.001)が高かった。CMを使用した患者ではCM使用がない患者と比較して5年全生存率が低下していた(82.2%[95%CI, 76.0%~87.0%] 対86.6%[95%CI, 84.0%~88.9%]; P = .001)。また、治療遅延または治療拒否を含まない多変量モデルにおいて、CMを使用すると、死亡リスクの増加(ハザード比2.08; 95%CI, 1.50-2.90)と独立して関連していた。ただし、治療遅延または治療拒否をモデルに含めると、CMと生存率の間に有意な関連性は認められなかった(ハザード比, 1.39; 95%CI, 0.83~2.33)。

 

結論と関連性: この研究では、CMを受けた患者はCCT追加を拒否する可能性が高く、死亡リスクが高かった。この結果は、CMに関連する死亡リスクがCCT拒否の有無に影響されたことを示唆している。