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特発性肺線維症に対してパムレブルマブ(抗結合組織成長因子)が有効かもしれない(PRAISE試験)

 肺は、肺胞と間質の二つから構成されます。肺はブドウの房と構造が似ており、肺胞はいわばブドウの実の部分に相当し、間質はブドウの皮に相当します。いわゆる”肺炎”は、外部から肺に入ってきた細菌により、主にブドウの実に炎症がおきた状態を指します。一方、ブドウの皮に炎症が起きた状態を”間質性肺炎”と呼びます。

 

 間質性肺炎には、関節リウマチなど膠原病や薬剤、粉塵など原因がはっきりしているものと、原因がはっきりしないものがあります。原因がはっきりしない間質性肺炎を特発性と呼びます。特発性間質性肺炎はさらに、その画像所見や病理所見などにより、特発性肺線維症や特発性器質化肺炎などに分類されます。

 

 特発性肺線維症は年々肺が線維化(固くなる)する病気であり、その症状として咳や息切れが年々ひどくなっていくことが特徴です。呼吸機能検査を行うと、肺活量が年々低下していきます。原因がはっきりしないため、その治療法の開発は困難でした。しかし、2008年にピレスパ®(塩野義製薬)、2015年にオフェブ®(ベーリンガー)が発売され、特発性肺線維症の治療も変わってきました。今回紹介する論文では、特発性肺線維症の新たな治療薬候補を検証しています。

 

 結合組織成長因子(CTGF)を阻害して線維化の進行を抑制するパムレブルマブが、特発性肺線維症の線維化を抑制する薬として効果が期待されています。本研究は第Ⅱ相試験であり、症例数が50例vs 50例と少ないため、確定的なことは言えません。しかし、プラセボ(偽薬)投与群とパムレブルマブ群とで治療効果を比較する試験デザインを採用しているため、十分期待がもてる結果となっています。プラセボ群と比較してパムレブルマブ群の方が、FVC(努力肺活量)の低下を抑制し、症状やCT所見、QOLの悪化を抑える傾向がみられました。

 第Ⅲ試験が現在進行しているとのこと。その結果がよければ、特発性肺線維症の第3の薬として近い将来登場することになるでしょう。

ARTICLES| VOLUME 8, ISSUE 1, P25-33, JANUARY 01, 2020

The Lancet Respiratory Medicine

Published:September 28,2019

DOI:https://doi.org/10.1016/S2213-2600(19)30262-0

 

要旨

背景

結合組織成長因子(CTGF)は分泌型糖タンパク質の一種であり、線維症の発生において中心的な役割を担っている。本研究は、特発性肺線維症におけるCTGFに対する完全組換えヒトモノクローナル抗体であるパムレブルマブ(FG-3019)の安全性および忍容性、有効性を評価するために設計された。パムレブルマブが特発性肺線維症の進行を遅らせるか止める、逆行させることができるかどうかを確立することを目的とした。

方法

無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅱ相試験(PRAISE)は、7か国(オーストラリア、ブルガリア、カナダ、インド、ニュージーランド、南アフリカ、米国)における39の医療センターで実施された。特発性肺線維症で、努力肺活量(FVC)の予測値に対する割合(%FVC)が55%以上の患者が登録され、パムレブルマブ30 mg / kgまたはプラセボの静脈内注射(3週毎48週間、16回の注射)のいずれかに、双方向応答技術を使用してランダムに1:1に割り当てられた。有効性の主要評価項目は、48週後の%FVCのベースラインからの変化とした。有効性の副次評価項目は主に、48週目での疾患の進行(ベースラインから%FVCが10%以上減少、または死亡)とした。 パムレブルマブ群の患者はすべて、少なくとも1回は治験薬を投与され、安全性の解析をされた。プラセボ群の患者2人は、登録エラーのために、有効性解析のための治療意図(ITT)集団から除外された。本試験はClinicalTrials.govNCT01890265に登録されている。

結果

2013年8月17日から2017年7月21日までに、103人の患者がランダムに割り当てられた(50人がパムレブルマブ、53人がプラセボ)。パムレブルマブは、48週時点で%FVCの低下を60.3%減少させた(ベースラインからの%FVCの変化はパムレブルマブ群で平均‐2.9% 対 プラセボ群で平均‐7.2%; 群間差4.3% [95%CI 0.4 – 8.3]; p=0.033)。疾患が進行した患者の割合は、48週の時点でパムレブルマブ群の方がプラセボ群よりも低かった(10.0% 対 31.4%; p=0.013)。パムレブルマブは忍容性が高く、安全性プロファイルはプラセボと同様であった。治療により発生した重篤な有害事象は、パムレブルマブ群の患者12人(24%)およびプラセボ群の患者8人(15%)で観察され、パムレブルマブ群の3人およびプラセボ群の7人が治療を中止した。 パムレブルマブ群での3人(6%)の死亡とプラセボ群での6人(11%)の死亡のうち、治療に関連すると考えられる人はいなかった。

解釈

パムレブルマブは特発性肺線維症の進行を遅らせ、忍容性良好であった。現在、第Ⅲ相試験が進行中であり、パムレブルマブは特発性肺線維症の安全かつ有効な新規治療薬として有望である。

資金提供 FibroGen。