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進行非小細胞肺癌に対するニボルマブとイピリムマブの併用療法

 ニボルマブは、京都大学の本庶先生が発見したPD-1を阻害する物質として、小野薬品が開発した世界初の免疫チェックポイント阻害剤です。純日本製の抗がん剤の一種であり、日本人として応援したい薬です。しかし、肺がんに関しては後発の海外企業に抜かれ、今や遅れをとっているように思われます。
 ペムブロリズマブなど同じ作用機序の免疫チェックポイント阻害剤が肺がんの初回治療として承認をとったのに対し、ニボルマブは初回治療で既存の抗がん剤治療に勝てず2次治療でしか承認されなかったのです。なぜ一次治療で勝てなかったのか不明ですが、その後小野薬品はアメリカの製薬会社ブリストルマイヤーズと組んで、イピリムマブとの併用に舵を切ったようです。そして、ニボルマブの治療効果が期待できるようなバイオマーカーを見つけるため、ガン細胞が持つ遺伝子変異の数(TMB)やPD-L1発現の有無を調べています。イピリムマブはCTLA-4を阻害する薬剤であり、ガン組織の近くにあるリンパ節のリンパ球を活性化させると考えられています。一方、ニボルマブはガン組織内にいるリンパ球を活性化すると考えられています。両者を同時に投与することにより、それぞれの場所で活性化されたリンパ球はガン細胞を再び攻撃するようになります。つまり、異なる作用点を持つ薬剤を併用することで効果が相乗的に上がることを期待しています。
 発生当初のガン細胞はリンパ球に外敵と判断され攻撃されて死滅します。しかし、ガン細胞は表面にPD-L1を発現することで、リンパ球に対して外敵ではないというメッセージを送り生き延びるようになるのです。ガン細胞表面のPD-L1はリンパ球表面のPD-1と結合してメッセージを送ることがわかっており、その結合をブロックすればまたガン細胞は外敵だとリンパ球が認識するようになるのです。
 今回紹介する論文では、PD-L1を発現する未治療肺ガンに対してイピリムマブとニボルマブの併用療法が既存の抗がん剤治療に生存期間で勝るかを主要評価項目として検証していますが、試験デザインは1:1:1の3つの治療群で比較することとなっています。その結果、主要評価項目で有意差を示し、ポジティブな研究と言えます。さらに、副次的評価項目として、PD-L1発現が低い患者、TMBが少ない患者でも生存期間を調べており、結果は同様でした。また、ニボルマブ単剤群と比較してイピリムマブの上乗せ効果があるかも調べています。PD-L1発現が1%以上の患者における2年生存率は、イピリムマブ+ニボルマブ群が40.0%、ニボルマブ単独群が36.2%、化学療法群が32.8%でした。
November 21, 2019
N Engl J Med 2019; 381:2020-2031
DOI: 10.1056/NEJMoa1910231

 

背景

進行期の非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象とした初期段階の臨床試験において、ニボルマブとイピリムマブ併用療法はニボルマブ単剤療法より奏効率が高く、特にPD-L1発現する腫瘍をもつ患者で効果が高かった。NSCLC 患者においてニボルマブ+イピリムマブが長期的に利益をもたらすかを評価するデータが必要である。

方法

IV 期または術後再発のNSCLCを対象とした今回の非盲検第Ⅲ相試験において、PD-L1発現量が 1%以上の患者をニボルマブ+イピリムマブ群、ニボルマブ単独群、化学療法群に1:1:1の割合で無作為に割り付けた。PD-L1 発現量が 1%未満の患者はニボルマブ+イピリムマブ群、ニボルマブ+化学療法群、化学療法単独群に1:1:1の割合で無作為に割り付けた。化学療法を受けたことのある患者はいなかった。今回報告する主要評価項目は、PD-L1発現量が 1%以上の患者において,化学療法群とニボルマブ+イピリムマブ群の全生存期間を比較することであった。

結果

PD-L1発現量が 1%以上の患者では、全生存期間中央値はニボルマブ+イピリムマブ群で 17.1か月(95%信頼区間 [CI] 15.0~20.1),化学療法群で14.9か月(95% CI 12.7~16.7)であり(P=0.007),2年全生存率はそれぞれ40.0%と32.8%であった。奏効期間の中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群で23.2か月、化学療法群で6.2か月であった。PD-L1 発現量が1%未満の患者においても全生存期間の延長がみられ、その中央値はニボルマブ+イピリムマブ群で17.2か月(95% CI 12.8~22.0)、化学療法群で12.2 か月(95% CI 9.2~14.3)であった。すべての試験患者の全生存期間中央値はニボルマブ+イピリムマブ群で 17.1か月(95% CI 15.2~19.9)、化学療法群で 13.9か月(95% CI 12.2~15.1)であった。全集団でgrade 3または4 の治療関連有害事象を認めた患者の割合はニボルマブ+イピリムマブ群で32.8%、化学療法群で36.0%であった。

結論

ニボルマブ+イピリムマブによる一次治療は化学療法と比べ、PD-L1の発現量にかかわらずNSCLC患者の全生存期間が延長した。長期間の追跡で新たな安全性の問題はなかった。(ブリストル・マイヤーズ スクイブ社,小野薬品工業社から研究助成あり。CheckMate 227 試験:ClinicalTrials.gov登録番号NCT02477826)