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アップルウォッチで心房細動が検出できる:Large-Scale Assessment of a Smartwatch to Identify Atrial Fibrillation;Apple Heart Study

 心臓は左右心房と左右心室の四つの部屋に分かれます。心房細動では心房が小刻みにけいれんするように動くために、不規則に心臓が収縮するようになります。そのため、脈が不規則に打つようになったり(不整脈)、異常な速さで脈を打つようになったりします(頻脈)。

 頻脈になれば動悸やめまいといった症状がでるので病気を自覚できますが、心房細動をもつ多くの患者さんでは特に自覚症状がありません。心房細動をもっていることを全く知らず、健康診断の心電図で指摘されるまで気づかないことがよくあります。心房細動では心房内に血栓ができやすくなります。その血栓が脳に飛ぶと、脳の血管が詰まり脳梗塞を発症します(長嶋茂雄氏の脳梗塞の原因が心房細動であったことはよく知られています)。脳梗塞になるまで心房細動をもっていたことを知らなかった患者さんも少なくありません。

 さらに発見が遅れる理由として、発作性心房細動の存在があります。同じ患者さんでも心房細動になっている時となっていない時が混在しているのです。心房細動になっていないときに健康診断をうけても心電図は正常という結果がでてしまいます。知らないうちに心房細動が出現し血栓をつくり、脳梗塞になってしまうこともあります。そのような自覚症状のない心房細動患者さんを早期に発見治療し、脳梗塞を防ぐことは大変重要です。脳梗塞になって麻痺が残ると、その人の人生やQOLが一変するからです。

 今回紹介する論文では、Apple社が資金提供し、自覚症状のない心房細動を発見するためApple Watchを使用するという革新的な研究結果を報告しています。研究参加者も約42万人と超大規模研究と言えるでしょう。参加者はApple Watchを購入し、今回の研究用アプリをインストロールして研究に同意することが必要でした。それなりの経済的レベル知的レベルを持っている人が参加したと想定され、一般人口とは有病率などで異なる可能性に注意が必要です。

 約42万人が参加した中で、Apple Watchで「心房細動の可能性あり」と通知を受けた人は2,160人(0.5%)でした。参加者年齢の内訳をみると、22~39歳が52%であり、かなり若い人が参加したことが分かります。65歳以上に限ると、「心房細動の可能性あり」と通知された人は3.1%とかなり高くなります。通知をうけて心電図を測定した人の中で、心房細動が確認されたのは34%でした。

 Apple Watchが実際の臨床現場に導入されるにはもっと効率的なシステムが必要と考えられますが、Apple Watchが心房細動の発見に役立つことは確かなようです。

 

November 14, 2019
N Engl J Med 2019; 381:1909-1917
DOI: 10.1056/NEJMoa1901183

背景

着脱可能装置にある光学センサーは不整脈を検出できる。スマートウォッチの一般使用中に、アプリケーション(アプリ)が心房細動を検出できるかどうかは不明である。

方法

心房細動を持っていないと自身で報告した参加者が、スマートフォン(アップルのiPhone)アプリを使用し、観察研究に同意した。スマートウォッチの不整脈通知アルゴリズムが心房細動の可能性を検出した場合、遠隔診療が開始され、心電図(ECG)パッチがその参加者に郵送され、最長で 7 日間装着された。不整脈の通知から 90 日後と、研究終了時に調査を行った。主要評価項目は、通知を受けた参加者のうちECGパッチで心房細動を認めた割合と,標的信頼区間の幅を0.10とする不整脈間隔の陽性適中率を推定することであった。

結果

8ヵ月間で419,297人を参加登録した。中央値 117 日間の観察期間中に、2,161人(0.52%)が不整脈の通知を受けた。不整脈通知の 平均13日後にECGパッチは装着され、450人が解析可能なデータを含む ECG パッチを返送した。そのうち心房細動が存在した割合は全体で34%(97.5%信頼区間 [CI], 29~39)であり,65 歳以上に限ると35%(97.5% CI, 27~43)であった。不整脈通知を受けた参加者において、その後の不整脈通知と ECG で心房細動が同時に観察された陽性適中率は0.84(95% CI, 0.76~0.92)、その後の不整なタコグラムと ECG で心房細動が同時に観察された陽性適中率は0.71(97.5% CI, 0.69~0.74)であった。通知を受けた参加者で90日調査に応じた1,376人のうち57%は、本研究以外の医療提供者に接触していた。アプリに関連して重篤な有害事象報告はなかった。

結論

不整脈の通知を受ける率は低かった。不整脈通知を受けた参加者において、34%の参加者でECG パッチによって心房細動が確認され、通知の84%と心房細動が一致していた。施設を要しない今回の実践的な研究デザインは、参加者の来院を要さず、ユーザー所有のデバイスで信頼性のある結果や遵守率を評価でき、大規模な臨床現場の研究の基盤となる。(アップル社から資金提供あり。Apple Heart Study:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03335800)