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コントロール不良喘息における単一吸入器による超微細粒子3剤吸入療法:2つの二重盲検並行群無作為化対照第3相試験(TRIMARAN試験とTRIGGER試験)

 喘息患者さんの治療の目標は、症状がない状態を日々継続することです。セキや喘鳴(ゼーゼー)など発作(増悪)が起きた時だけ治療するのでは不十分であり、発作がでないように長期的に管理していきます。長期管理薬を毎日使用しても喘息の症状や発作(増悪)がみられるとき、喘息のコントロール不良と呼びます。

 

 喘息の長期管理薬の代表として、吸入薬があります。吸入薬の開発は各製薬会社がしのぎを削っており、次々と新たな薬が登場しています。吸入薬はその作用機序から3つに分類され、略してICS、LABA、LAMAと呼ばれます(ICS=吸入コルチコステロイド、LABA=長時間作用型β2刺激薬、LAMA=長時間作用型ムスカリン拮抗薬)。患者さんの病状に合わせて薬を選択しますが、軽症の喘息にはICS、ICSで喘息コントロールが不良であればLABAを追加、LABA追加でも不良であればLAMAをさらに追加します。

 最終的に3つの薬を吸入することになり、もし吸入方法がそれぞれ異なり使い分けが必要となると、患者さんは使用法に戸惑ったり面倒に感じたりして、そのうち使用しなくなってしまう可能性が高くなります。そこで、最近は合剤の開発が盛んです。1つの吸入器で3つの薬を同時に吸入できる方が、3つの吸入器を使い分けるより明らかに簡単であり、服薬遵守率の改善が期待できます。

 

 今回紹介する論文では、ICSとLABA、LAMAの3剤を一つの吸入器で同時に吸入できるようにした薬を使って、コントロール不良の喘息に対する治療効果を検証しています。イタリアの製薬会社で開発した今回の吸入薬は、薬を極微細粒子(extrafine)として、吸入すれば気管支の末梢(奥)まで到達できるようにしているようです。喘息は気管から気管支末梢までの炎症が原因であり、気管支末梢まで薬剤を行き渡らせる方が治療効果が期待できます。

 

ーーーここから専門的記述となりますーーー

 患者参加基準には、40歳未満に喘息と診断され、現喫煙者は除外されるなど、COPD患者を除外するように工夫されています。実際に登録された患者背景をみると、女性が60%、白人100%、非喫煙者85%、気管支拡張剤(SABA)投薬前の%FEV1.0は平均52-55%、SABAによる一秒量改善率は平均31-35%(範囲12-420%)、SABA投与前の一秒率は平均59-61%、SABA投与後の一秒率は平均63-65%(範囲26-97%)となっています。純粋なCOPDはほぼ除外されており、気流閉塞の可逆性も認めるものの完全ではない患者が約半数はいることより、COPDの要素を含む喘息(ACO)が多く参加していると考えてよいようです。このような患者群ではやはりLAMAの効果は高いと考えられ、今回の3剤同時吸入薬はICS+LABAより治療効果は優れていました。しかし、ICS+LABA+チオトロピウムとは効果に有意差はなく、3つの合剤の単一吸入器の優位性は証明できていません。

Published:September 30, 2019

DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(19)32215-9

要旨

背景

喘息における単一吸入器3剤療法の有効性を評価した研究は今のところない。 ジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP; 吸入コルチコステロイド)と、フマル酸フォルモテロール(FF; 長時間作用型β2アゴニスト)、グリコピロニウム(G; 長時間作用型ムスカリン拮抗薬)の単一吸入器による超微細粒子3剤吸入併用療法と、BDP+FF併用療法を比較した2つの研究を報告する。

方法

2つの並行群, 二重盲検, 無作為化, 実薬対照, 第3相試験(TRIMARANおよび TRIGGER試験)では、16か国171施設(TRIMARAN)および17か国221施設(TRIGGER)から患者を登録した。対象施設は二次および三次医療センターと専門研究機関であった。コントロール不良の成人喘息(18〜75歳)であり、前年に1回以上の増悪の既往があり、吸入コルチコステロイド(TRIMARAN:中用量; TRIGGER:高用量)と長時間作用型β2アゴニストで治療されていた患者を登録適格とした。登録患者はBDP / FF(TRIMARAN:BDP100μgとFF6μg; TRIGGER:BDP 200μgとFF6μg)で2週間最初に治療された後、国別に層別化した調整ブロック無作為化を用いた相互応答技術システムを使用してランダムに各治療に割り当てられた。患者と担当医、施設スタッフ、スポンサースタッフには、BDP / FF / GおよびBDP / FFの割り当て結果はマスクされた。TRIMARAN試験では、患者は52週間のBDP / FF / G(BDP100μgとFF6μg、G10μg)またはBDP / FF(BDP100μgとFF6μg)2吸入1日2回に無作為に1:1に割り当てられた。TRIGGER試験では、患者は52週間のBDP / FF / G(200μgBDP、6μgFF、および10μgG)を2吸入1日2回、またはBDP / FF(200 BDPおよび6μgFF)を2吸入1日2回、非盲検のBDP / FF(BDP 200μgおよびFF 6μg)2吸入1日2回+チオトロピウム2・5μgを2吸入1日1回のいずれかに無作為に2:2:1に割り当てられた。両方の試験の主要評価項目(BDP / FF / G対BDP / FF)は、26週目の治療薬投与前の一秒量(FEV1)および52週間にわたる中等症と重症増悪の発生率とした。安全性は少なくとも1回の試験治療を受けたすべての患者で評価された。これらの試験はClinicalTrials.govのNCT02676076(TRIMARAN)、NCT02676089(TRIGGER)に登録された。

結果

2016年2月17日から2018年5月17日までに、TRIMARAN試験では1155人の患者にBDP / FF / G(n = 579)またはBDP / FF(n = 576)が投与された。 2016年4月6日から2018年5月28日までに、TRIGGER試験では1437人の患者にBDP / FF / G(n = 573)またはBDP / FF(n = 576)、BDP / FF+チオトロピウム(n = 288)が投与された。 BDP / FF群と比較して、26週時点での投薬前FEV1はTRIMARAN試験のBDP / FF / G群で57 mLの改善(95%CI 15–99; p = 0.0080)、TRIGGER試験では73 mLの改善(26–120; p = 0.0025)がみられ、中等症から重症増悪の発生率がTRIMARAN試験では15%の減少(発生率の比0.85、95%CI 0.73–0.99; p = 0.033)、TRIGGER試験では12%の減少(0.88, 0.75–1.03; p = 0.11)がみられた。4人の患者が治療関連の重篤な有害事象を起こした。1人はTRIMARAN試験のBDP/FF/G群から、3人はTRIGGER試験から発生し、その内1人はBDP / FF / G群、2人はBDP / FF群であった。TRIMARAN試験のBDP / FF / G群の3人と、TRIGGER試験の2人(BDP / FF / G群の1人とBDP / FF群の1人)では、死亡に至る有害事象が発生した。治療に関連すると考えられる死亡者はなかった。

解釈

コントロール不良の喘息では、吸入コルチコステロイド+長時間作用型β2刺激薬に長時間作用型ムスカリン拮抗薬を加えると、肺機能が改善され、増悪が減少する。

資金提供

Chiesi Farmaceutici