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喘息に対する長時間作用性β2 刺激薬(LABA)は、吸入ステロイド(ICS)と同時に投与されれば、本当に安全なのか。

 現在日本で使用できる吸入長時間作用型β2刺激薬(吸入LABA)は、販売開始順にセレベント🄬(2002年)、オンブレス®(2011年)、オーキシス®(2012年)の3種類があります。同様の薬剤なにもかかわらず、セレベント®発売からオンブレス®発売まで9年もかかっています。また、オンブレス®とオーキシス®の適応症がCOPDに限定されているのに対し、セレベント®はCOPDおよび気管支喘息に使用できます。

 

 発売当初はセレベント®は気管支喘息によく使われていました。しかし、吸入ステロイド(ICS)とセレベント®の合剤であるアドエア🄬が2007年に発売され、現在は気管支喘息にセレベント®が処方されることはまずなくなりました。

 

 セレベント®の使用方法を変えた契機として、2002年のCHEST誌に報告されたSMART試験が挙げられます(Chest. 2006 Jan;129(1):15-26. DOI: https://doi.org/10.1378/chest.129.1.15)。喘息患者に追加治療としてセレベント®もしくはプラセボを投与したところ、セレベント®投与患者群において喘息関連死や致死的事象が有意に増加したという結果でした。

 

 米国FDAはLABAを含むすべての製剤に使用上の警告をだしました。しかし、その後の解析によりICSが投与されていない患者でLABAを投与すると、喘息関連死のリスクが上昇するということが分かってきました。米国FDAはLABAとICSが同時に投与されれば、LABAは本当に安全なのか製薬企業4社に試験するように命じました。その4つの試験を統合して解析した結果が、今回紹介する論文になります。

June 28, 2018
N Engl J Med 2018; 378:2497-2505
DOI: 10.1056/NEJMoa1716868

背景

喘息を治療する上で長時間作用性β2 刺激薬(LABA)が安全かという懸案は、大規模市販後臨床試験において死亡リスクが上昇していることではじめて指摘された。2010年に米国食品医薬品局(FDA)は、喘息治療薬のLABAを販売する製薬企業4社に対し、12~17歳の若年者と成人患者を対象とするLABA+吸入ステロイド併用療法の安全性と吸入ステロイド療法単独の安全性を比較する前向き無作為化対照試験を実施するように命じた。FDA と協同して、製薬企業は試験方法を統一し、独立合同監視委員会が4試験の最終統合解析を行えるようにした。

方法

合同監視委員会の一員として我々は、吸入ステロイド+LABA併用療法と吸入ステロイド単独療法を比較した4試験の統合解析を行った。主要評価項目は喘息関連の気管内挿管または死亡を総合して評価した。事後に行った副次的評価では重篤な喘息関連イベントおよび喘息発作が含まれた。

結果

intention-to-treat 解析の対象とした36,010例のうち4例において、喘息に関連した気管内挿管事例が3件(吸入ステロイド群が2件、併用療法群が1件)認め、喘息に関連した死亡事例が2件(いずれも併用療法群)認めた。副次的解析では、重篤な喘息関連イベント(入院または気管内挿管、死亡のいずれか)のうち1つ以上のイベントが、吸入ステロイド群では18,006例のうち108 例(0.60%)で発生し、併用療法群では18,004例のうち119 例(0.66%)で発生した(併用療法群の相対リスク1.09、95%信頼区間 [CI] 0.83~1.43、P=0.55)。1件以上の喘息発作は、吸入ステロイド群では2,100 例(11.7%)に発生し、併用療法群では1,768 例(9.8%)で発生した(相対リスク 0.83,95% CI 0.78~0.89,P<0.001)。

結論

LABA+吸入ステロイド併用療法は、吸入ステロイド単独療法と比較して、重篤な喘息関連イベントのリスクが有意には高くなっておらず、喘息発作は有意に少なくなっていた。