HOME > 院長ブログ > 院長による医学論文紹介 > 軽症喘息に対するブデソニド-ホルモテロール(シムビコート®)必要時吸入療法の比較試験(Novel START 試験)

軽症喘息に対するブデソニド-ホルモテロール(シムビコート®)必要時吸入療法の比較試験(Novel START 試験)

 本年5月のNEJM誌に発表されたNovel START試験は、先週と先々週に当ブログで紹介したSIGMA1とSIGMA2試験と同様に、軽症喘息患者を対象としてブデソニド-ホルモテロール(シムビコート🄬)を必要時吸入療法が有効かを検証しています。

 

 START試験とSIGMA試験の相違点の一つとしてスポンサーの違いがあります。SIGMA試験では製薬企業のアストラゼネカ社が全面的なスポンサーでしたが、START試験ではアストラゼネカ社の関与は一部のみであり、ニュージーランドの公的研究施設が包括的なスポンサーとなっています。すなわち、START試験の研究デザイン作成やデータ集計、試験実施は公的研究施設が主体となって行っています。

 

 START試験は実際の臨床現場により即した試験デザインとなっており、プラセボ(偽薬)を使用していません。試験開始前の治療は必要時の短時間作用性気管支拡張剤(SABA)吸入のみであった患者が対象であり、吸入ステロイド(ICS)やロイコトリエン拮抗薬を使用していた患者さんは対象にしていません。つまり、START試験にはSIGMA試験よりも軽症の患者さんが登録された可能性があります。

 

 主要評価項目は喘息発作の年間発生率であり、シムビコート🄬必要時吸入とICS毎日吸入とで発生率に有意差はなかったという結果は3つの試験で一致しています。しかし、START試験が副次評価項目として挙げた重症の喘息発作の回数については、シムビコート🄬必要時吸入の方がICS毎日吸入より少なくなっていました。発作が起きそうだと患者さんが自覚したときに、ICSと気管支拡張剤をどちらも吸入することで重症化を抑えることができるということかもしれません。ただし、ICS毎日吸入群の服薬遵守率(アドヒアランス)は56%とかなり低くなっており、ICSを真面目に吸入していなかった患者さんが重症の喘息発作を起こしてしまったとも考えられます。

 

 喘息発作の重症化を抑えることが第一であればシムビコート🄬必要時吸入療法を選択し、発作はまずない患者さんで咳といった日々の症状を抑えることが第一であればICS毎日吸入療法を選択するという使い分けが今後必要となってくるかもしれません。

 N Engl J Med 2019; 380 : 2020 – 30.

背景

二重盲検プラセボ対照試験において、ブデソニド-ホルモテロールの必要時吸入療法は短時間作用性β2刺激薬(SABA)の必要時吸入療法よりも重症の喘息発作のリスクが低く、ブデソニド毎日吸入+SABA必要時吸入療法とはリスクが同程度であるという結果であった。臨床現場をもっと反映するようにデザインされた臨床試験からのデータが利用できれば有益ではないかと考えられる。

方法

我々は軽症喘息の成人患者を対象として、52週間の無作為化非盲検の並行群間比較試験を実施した。患者は3つの治療群のうちの1つに無作為に割り付けられた。すなわち、アルブテロール(100μg、喘息症状のために必要な時に加圧式定量吸入により2吸入)(アルブテロール群)、ブデソニド(200μg、タービュヘイラーにより1日2回1回1吸入)+アルブテロール必要時吸入(ブデソニド維持療法群)、またはブデソニド-ホルモテロール(ブデソニド200μg+ホルモテロール6μg、タービュヘイラーにより必要時1吸入)(ブデソニド-ホルモテロール群)の3つである。吸入器の電子モニタリングを使用して投薬量を測定した。主要評価項目は喘息発作の年間発生率であった。

結果

無作為化された675例のうち668例を解析対象とした。喘息発作の年間発生率はブデソニド-ホルモテロール群ではアルブテロール群よりも低く(発生率絶対値 0.195 対 0.400; 発生率の比 0.49;95%信頼区間[CI],0.33~0.72;P<0.001)、ブデソニド維持療法群の発生率と有意差はなかった(発生率絶対値 ブデソニド-ホルモテロール群の0.195 対 ブデソニド維持療法群の0.175;発生率の比1.12;95% CI 0.70~1.79;P=0.65)。重症発作の回数はブデソニド-ホルモテロール群では、アルブテロール群(9回 対 23回;相対リスク 0.40;95%CI 0.18~0.86)およびブデソニド維持療法群(9回 対 21回;相対リスク 0.44;95%CI 0.20~0.96)よりも少なかった。ブデソニドの吸入量の平均値(±SD)はブデソニド-ホルモテロール群では107±109μg/日であり、ブデソニド維持療法群では222±113μg/日であった。有害事象の発生状況は以前の臨床試験の結果や臨床現場からの報告と一致していた。

結論

軽症喘息の成人患者を対象とした非盲検試験において、ブデソニド-ホルモテロール必要時吸入療法はアルブテロール必要時吸入療法よりも喘息発作の予防に優れていた。(アストラゼネカ社およびニュージーランド健康研究協議会より資金提供あり。Novel START 試験:Australian New Zealand臨床試験登録番号 ACTRN12615000999538)