HOME > 院長ブログ > 院長による医学論文紹介 > I~II期小細胞肺がんとIII期小細胞肺がんの治療成績に差はあるのか

I~II期小細胞肺がんとIII期小細胞肺がんの治療成績に差はあるのか

 小細胞肺がん非小細胞肺がんと比較して進行が早く、ほとんどの小細胞肺がん患者さんはすでに進行した状態で発見されます。非小細胞肺がんではI期からIV期の4つに病気の進行度を分類し治療方針を決定します。しかし、小細胞がんではI期とII期の患者さんがほとんどいないため、治療法の開発は困難です。そのため、I~III期はすべて同様の治療法が選択されています。つまり、限局型小細胞肺がん(≒I~III期)にはき胸部放射線照射と抗がん剤治療を同時に行ったのち予防的全脳照射、進展型小細胞肺がん(≒IV期)には抗がん剤治療が行われます。

 今回紹介する論文では、III期と同様の治療が行われたI~II期の小細胞肺がん患者がどのような治療成績を得られたのかを報告しています。86名(16.9%)という限られた症例数ですが、この結果は主治医およびI~II期の患者さんにとって有用な情報となるでしょう。

以下は論文要旨の和訳です。

JAMA Oncol. 2018 Dec 6: e185335. [Epub ahead of print]

重要な点

I~II期の小細胞肺がん(SCLC)の治療方針を決めるのに役立つ科学的根拠は少ない。

目的:

現在行われている放射線科学療法で治療されたI~II期のSCLC患者の特徴と転帰を調査する。

 

試験デザイン、設定、および参加患者

2008年4月7日から2013年11月29日まで実施された限局型SCLC患者を対象とした多施設共同第III相試験(CONVERT)では、1日1回と1日2回の放射線療法を比較した。今回はこの試験の事後二次解析として、TNM分類のIからII期のSCLCとIII期のSCLCを比較した。データ分析は、2017年11月1日から2018年2月28日まで行われた。

 

治療:

CONVERT試験では、患者を1日2回(45 Gy30分割)の放射線化学療法群または1日1回(66 Gy33分割)の放射線化学療法群に割り付けした。必要に応じて予防的全脳照射(PCI)を実施した。

 

主な結果:

試験の主要評価項目は全生存期間(OS)とした。 TNM病期の情報は前もって集められた。 しかし、今回の解析は計画外であり、TNM病期によって層別化は行われなかった。

 

結果:

543名の患者のうち合計509名(93.7%)(男性277名 [54.4%];平均年齢[SD]、61.5歳[8.3])でTNM病期の情報が取得でき、今回のサブグループ解析に登録された。509名のうち86名(16.9%)が TNM分類のI期からII期であった。平均総腫瘍体積は、III期の患者(93 cm; 範囲 0.5〜513.4 cm)と比較して、I〜II期の患者(38.4 cm; 範囲 2.2〜593.0 cm)より小さかった(P<0.001)。 2群間で治療前の特徴、治療状況に有意差はなかった。同様に、PCIを受けた患者数はI~II期が78名 [90.7%])、III期が346名 [81.8%])で有意差はなかった(P= 0.10)。 I~II期の患者は、III期の患者と比較して全生存期間が長かった(中央値50ヶ月[95%CI、38ヶ月〜未到達] 対 25ヶ月[95%CI、21〜29ヶ月]; ハザード比 0.60 [95%CI、0.44-0.83]; P = 0.001)。I〜II期の患者では、試験群間で生存期間に優位差は見られなかった(中央値、1日1回投与群で39ヶ月 対 1日2回投与群で72ヶ月; P = 0.38)。 III期の患者と比較してI~II期の患者に急性食道炎の発生率が低い(グレード3以上、9名 [11.3%] 対 82名 [21.1%]; P <0.001)ことを除いて、急性および晩期毒性に有意差はなかった。

 

結論:

CONVERT試験において、I~II期のSCLC患者は化学放射線療法およびPCIにより長期生存を達成し、毒性は許容範囲内であった。現在行われている化学放射線療法で治療されたI~II期の小細胞肺がん患者はIII期の患者と比較して転帰が良好であることが今回の研究により示唆された。治療方針の決定を下す上で有用な情報を医師が患者に与えることができるようになるであろう。