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結核治療にオンライン診療が有効

 結核の治療は2-4種類の薬を1日1回内服するという簡単なものですが、問題はその治療期間が6-9カ月間と長期にわたることです。教育レベルが高く、結核の知識がある患者さんの場合、しっかりと指示通り治療をできるでしょう。しかしながら、ホームレスのような患者さんが、毎月病院に通院し、毎日薬を指示通り飲んでくれるかは微妙です。

 結核の治療を途中で止めてしまうと、その患者さんの結核が治らないだけでなく、薬の効かない耐性結核菌が増えて他人に感染させてしまうかもしれません。それを防ぐために、医師が処方するだけではなく、保健師などが患者宅を訪問するなどしてちゃんと服薬しているか確認をするという方法(DOT)をWHOは推奨しています。

 今回の論文では、DOTに替わる方法として、スマホを患者に貸し出し、ちゃんと服薬している様子を動画にして毎日送ってもらうという方法(VOT)が有効かどうかを検証しています。

 

以下は論文要旨の和訳です。

Lancet 2019; 393; 1216-24

背景

DOT(直接服薬確認療法)は、1990年代初頭から結核の標準治療となっているが、患者および医療提供者にとって簡便な方法とは言えない。そのため、VOT(ビデオ観察療法)がDOTに代わるものとして条件付きでWHOで推奨されている。我々は、治療観察レベルがVOTにより改善されるかどうかを検証した。

方法

イギリスにある22軒のクリニックにおいて、多施設、アナリスト盲検、無作為化比較、優位性試験を行った。

活動性肺結核または肺外結核を有する16歳以上の患者であって、その地域の規定によりDOTの適応がある患者を、試験参加適格とした。スマートフォンを充電できない患者は除外された。

試験参加者はVOT群(スマートフォンアプリを用いて毎日遠隔で観察)またはDOT群(週に3〜5回、自宅もしくはコミュニティ、または診療所で観察)にランダムに割り当てられた。ランダム化は、SealedEnvelope社の最小化手法を用いて行われた。

DOT群では、医療施設または教会スタッフにより服薬確認が行われ、服薬確認されない日は患者自身で服薬した。VOTはロンドンにあるセンターで一元管理された。患者はスマートフォンアプリを使って、薬を服薬した様子を録画し、動画を毎日送信するようにトレーニングを受けた。服薬確認者は、パスワードで保護されたウェブサイトを通して、これらの動画を見るように教育された。なにか有害事象を認めた場合はその動画も報告するように患者に推奨された。スマートフォンとデータプランは無料で研究者より提供された。治療または研究が終了するまでに、服薬確認者はDOTもしくはVOTの観察記録を完成させた。

主要評価は、登録後最初の2ヶ月間で予定された服薬が80%以上で確認されることとした。Intention-to-treat(ITT)解析および限定的解析(少なくとも1週間の治療を完了した患者のみを解析)が行われた。主要評価を達成された患者の割合が15%以上の差があれば優位性ありと決定された(60%対75%)。

本試験はInternational Standard Randomized Controlled Trialsの登録番号ISRCTN26184967に登録されている。

結果

2014年9月1日から2016年10月1日までの間に、226名の患者を無作為に割り付けた。VOT群は112名、DOT群は114名であった。全体として、131名(58%)の患者が、ホームレスや服役、薬物使用、アルコール依存、精神疾患の既往歴を有していた。

ITT解析では、最初の2か月間で、VOT群112名のうち78名(70%)、DOT群114名のうち35名(31%)が予定された服薬の80%以上を達成した(調整オッズ比[OR] 5.48, 95%CI 3.10–9.68; p<0.0001)。

限定的解析では、VOT群101名のうち78名(77%)、DOT群56名のうち35名(63%)が主要評価を達成した(調整オッズ比[OR] 2.52, 95%CI 1.17–5.54; p=0.017)。

最も頻度が高かった有害事象は胃痛、吐き気、そして嘔吐であった(VOT群112名のうち16名 [14%]、およびDOT群114名のうち9名[8%])。

解釈

VOTはDOTよりも結核治療の観察に有効な方法であった。様々な状況でDOTよりもVOTを望む患者は多いと思われる。また、毎日および複数回の投薬を監視する方法として、DOTよりもVOTは受け入れられやすく、効果的で安価な方法と思われる。