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新型コロナによるロックダウン後、喘息の増悪(発作)が減少(英国からの報告)

当然のことながら、ロックダウン(日本では緊急事態宣言)は新型コロナウイルスの感染が拡大しないように実施するものです。

しかし、ロックダウンが新型コロナ以外の病気に与える影響(好影響も悪影響も)が気になるところです。がん患者の手術など治療の遅れ、肥満による生活習慣病や自殺に代表される精神疾患の増加といった悪影響、細菌性肺炎など新型コロナ以外の感染症の減少といった好影響が考えられます。今回取り上げる論文では、喘息増悪(発作)の減少について検証しています。

 

2020年3月にイングランドでロックダウンが実施されました。下図に示すように、例年と比べると、喘息増悪(発作)がロックダウン後に減少しているのがわかります。ただし、喘息増悪による入院は減少しておらず、プライマリ・ケア(総合医)を受診した喘息増悪のみ減少していました。

 

ロックダウンにともない、ソーシャルディスタンスを取ったり、マスクや手指衛生を徹底することで、コロナ以外のウイルス感染が原因となる喘息増悪が減ったことが、主な原因と考えられています。さらには、喘息がCOVID-19の重症化リスクになりうるという報道により、吸入薬など喘息の長期管理薬をしっかりと行うようになった喘息患者さんが増えたことも一因ではないかと考えられます。

 

COVID-19による全国ロックダウンが喘息増悪に与えた影響:英国プライマリーケアデータの断続的時系列解析

Impact of COVID-19 national lockdown on asthma exacerbations: interrupted time-series analysis of English primary care data

http://dx.doi.org/10.1136/thoraxjnl-2020-216512

 

概要

背景 

COVID-19とそれに続く全国ロックダウンが喘息の増悪に与えた影響は不明である。

 

方法 

全国レベルのプライマリーケアデータベース「Optimum Patient Care Database」から検証済みのアルゴリズムを用いて同定された喘息コホートを対象に、断続的時系列解析(2020年3月23日のロックダウンを断続時点として)を行った。1週間ごとの喘息増悪率を導き出し、期間中の増悪率を比較した:2020年1月~8月とCOVID-19以前、2016年~2019年の1月~8月の増悪率を比較した。喘息関連の通院・入院(事故・救急受診を含む)、またはプライマリケアにおいて急性呼吸器症状に対する経口コルチコステロイド投与の記録があれば増悪と定義した。一般化最小二乗法によるモデリング手法を用い、年齢、性別、イングランドの地域、医療環境によって解析を層別化した。

 

結果

9,949,387人の患者のデータベースから、2016~2020年に少なくとも1回の増悪を経験した喘息患者は100,165人だった。278,996件の増悪エピソードのうち、49,938件(17.9%)が病院受診を必要とした。ロックダウン前の期間とロックダウン後の期間を比較すると、すべての患者で増悪率のレベルが統計的に有意に低下していることが確認された(1人年あたり-0.196エピソード;p<0.001;1年あたり喘息患者100人に対してほぼ20エピソード)。層別解析でのレベルの低下は 0.005~0.244(医療環境、通院・入院のないもののみが有意)、0.210~0.277(性別)、0.159~0.367(年齢)、0.068~0.590(地域)であった。

 

結論 

パンデミックの間、喘息増悪のためのプライマリーケアへの受診者数は大幅に減少した。この減少は、すべての年齢層と性別、イングランドのほとんどの地域で観察された。

 

キーメッセージ

キー・クエスチョンは何か?

COVID-19とそれに続く全国ロックダウンは、喘息増悪による医療機関受診にどのような影響を与えるのか?

 

最終結果は?

イングランドの喘息患者100,165人のコホートを対象とした全国レベルの断続時系列研究によると、プライマリ・ケアに記録による増悪率は、男女に関係なく、すべての年齢層、イングランドのほとんどの地域で、大幅に減少した。この減少は、プライマリケアで管理され、病院を受診する必要のない増悪で観察された。本研究では、病院への通院や入院を必要とする重篤な増悪については、有意な変化は認められなかった。

 

読みすすめる理由?

既存のエビデンスによると、喘息などの合併症は、COVID-19に関連した入院や死亡のリスク因子である。しかし、パンデミックとそれに伴う全国ロックダウンが、喘息の増悪に与えた影響は明らかになっていない。本研究により、全国ロックダウン処置が喘息増悪による医療機関受診に与えた影響について、全国レベルの知見を得ることができる。

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

新型コロナや喘息についても言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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