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表現型(フェノタイプ)をガイドにした喘息治療:ガイドラインに代わるアプローチ

診療ガイドラインとは

近年、各疾患別に診療ガイドラインが続々と出版されています。

肺炎ガイドライン、喘息ガイドライン、COPD、高血圧、糖尿病などなど、多数のガイドラインがあり、我々医師はそれを教科書のように活用して、実際の診療に役立てています。

 

それらのガイドラインは、最新の臨床試験などの結果を元に、各学会の専門家が集まって各疾患の論点をまとめ、推奨する診療行為を決定します。質の高い研究データがある治療は推奨レベルを高く、質の低い研究しかないような治療は推奨レベルを低く設定します。

 

例えば、喘息のガイドラインにおいて、すべての喘息患者に対して推奨される吸入ステロイド(ICS)療法は、科学的根拠が多数あるので、高い推奨レベルが設定されています。

 

ガイドラインの問題

一方、ガイドラインはその病気に携わるすべての医師を対象にとって教科書的な役割を担っており、専門医だけにむけて作っているわけではありません。非専門医がガイドラインに沿って診療を行えば、間違った結果にはならないように、言い換えれば合格点がとれるように、ガイドラインはつくられているのです。

 

喘息は患者数の多い疾患であり、高血圧や糖尿病と同様、非専門医が診ることの多い病気です。喘息の非専門医が、専門医とほぼ同様の診療ができるように、分かりやすいガイドラインが作成されています。

逆に、”One size fits all”と言って、フリーサイズしかないような洋服のようになってしまい、オーダーメイドの洋服を作れないと批判の対象にもなっています。

 

オーダーメイド治療と“Treatable Traits(治療可能な患者形質)”

今回紹介する論文は「総説」といって、研究結果を発表する論文ではなく、研究者が沢山の論文を紹介し意見を自分でまとめて雑誌に投稿したものになります。

著者らは、喘息の国際ガイドライン(GINA)が推奨するステップ別治療の問題点を提起しています。治療ステップがアップするたびに、薬剤の量と種類がどんどん増えていくステップ別治療法ではなく、患者毎のTreatable Traitsに応じて治療目標を立てる新たな方法を提案しています。

 

REVIEW

Phenotype-Guided Asthma Therapy: An Alternative Approach to Guidelines.

総説

表現型(フェノタイプ)をガイドにした喘息治療:ガイドラインに代わるアプローチ

 J Asthma Allergy. 2021;14:207-217

https://doi.org/10.2147/JAA.S266999

 

概要

近年の治療法の進歩にもかかわらず、喘息患者のかなりの割合がコントロール不良である。成人喘息における古典的な段階別薬物療法では、症状コントロールと増悪リスクの低下を目的として、吸入コルチコステロイド(ICS)の増量または他の長期管理薬の追加により治療を段階的に上げていき、コントロール期間をおいて治療を段階的に下げていくことが推奨されている。一般的に、喘息のガイドラインは、ICSの種類によって治療効果に大きな違いがあることを考慮していない。しかも、有効性と安全性を別々に考えてはおらず、「低用量」「高用量」というカテゴリーが、必然的に全身作用のリスクの低さと高さに対応していると誤って考えられている。もうひとつの批判対象として、軽症と中等症の喘息患者の多くは、「T2-high」の炎症の証拠がほとんどないためICS治療に対する治療効果が低い可能性が高いにもかかわらず、患者の炎症プロファイルをガイドラインは考慮していないことがある。一方、最新版のGlobal Initiative for Asthma (GINA)では、ステップ2の患者に対して、増悪を防ぐために、通常のICSおよび必要時ICS/ホルモテロールの投与が等しく推奨されていますが、治療目的(増悪、症状)が個々の患者によって異なること、また、異なる目的のためには異なる治療戦略が必要であることを考慮していない。今回の総説では、喘息治療に関して議論となる問題を取り上げ、ICSの高用量投与による副作用の可能性、患者の炎症プロファイル、達成すべき治療目標を考慮した代替案を提案する。

 

喘息についても言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから