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低酸素血症の患者さんへの酸素投与量の目標値は低い方がよいのか?(NEJM誌より紹介)

肺炎や敗血症などが原因となり、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)、低酸素血症をともなう急性呼吸不全を来たすと、集中治療室(ICU)などに入院とし、人工呼吸管理を含む高度医療を行います。患者さん体内の酸素が不足している状態なので、酸素投与が必要となります。しかし、どの程度の酸素量を投与すればよいのか、実はよく分かっていません。高濃度の酸素はそれだけで患者さんにとって有害であり、できるだけ酸素投与量を少なくした方がよいと一般的には考えられています。

 

多くの場合、吸入酸素濃度(FiO2)の高い酸素が投与されるため、患者さんの動脈血液中の酸素分圧(PaO2)は高くなってしまう傾向があります。いくつかの臨床試験において、このような治療は死亡率の増加と関連すると報告されています。しかし、科学的根拠(エビデンス)が乏しいため、診療ガイドラインではICUでの成人患者における酸素化目標値をいくらにすべきか明らかにされていません。

 

末梢酸素飽和度88~92%を目標とする方が96%以上と比較して有害作用が少なかったという報告や、PaO2目標値70~100mmHgで治療されると150mmHgまで許容するよりも死亡率が低かったという報告があります。

 

一方、Liberal Oxygenation vs Conservative Oxygenation in ARDS(LOCO2)試験では、低酸素投与群の方が高酸素投与群よりも腸間膜虚血のため90日死亡率が高かったと報告されました。

 

今回の紹介する論文では、Handling Oxygenation Targets in the ICU(HOT-ICU)試験の結果が報告されています。重症の肺炎やARDSなどにより、低酸素血症をともなう急性呼吸不全となりICUに入院した患者に対し、目標とする動脈血酸素分圧(PaO2)を60mmHgに設定すると、PaO2を90mmHgに設定した場合と比較して、90日後の死亡率が改善するかを無作為化比較試験で検証しています。

 

その結果、PaO2の目標値を60mmHgと低く設定しても、90 日後の死亡率、生命維持装置なしでの生存日数、退院後の生存日数、重篤な有害事象は、90mmHgと高く設定した場合と同じでした。

 

 

つまり、酸素投与量を決めるPaO2の目標値は低い方が良いことを証明しようとして証明できなかったことになるので、高いPaO2目標値が淘汰されず、白黒はつかないことになりました。死亡率が43%というかなりの重症患者を対象に行った試験ですので、なかなか差を出すのが難しいのかもしれません。

 

Lower or Higher Oxygenation Targets for Acute Hypoxemic Respiratory Failure

低酸素血症を伴う急性呼吸不全の治療は低酸素化、高酸素化のどちらがよいか

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January 20, 2021

DOI: 10.1056/NEJMoa2032510

 

抄録

背景

集中治療室(ICU)での低酸素血症を伴う急性呼吸不全患者には補助的に酸素投与が行われているが、異なる酸素化目標の利点と弊害は不明である。我々は、動脈血酸素分圧(PaO2)の目標値を低くすると、目標値を高くするよりも死亡率が低くなるという仮説を立てた。

方法

この多施設共同試験では,最近ICUに(無作為化の12時間前までに)入院した成人患者2928人を対象に,開放系で毎分10リットル以上の酸素投与を受けているか,または閉鎖系での吸入酸素分圧が0.50以上の患者を,最大90日間,PaO2を60mmHg(低酸素投与群)または90mmHg(高酸素投与群)のいずれかに目標設定して酸素療法を受けるように無作為に割り付けた.主要転帰は90日以内の死亡であった。

結果

90 日目時点で、低酸素投与群 1441 例中 618 例(42.9%)、高酸素投与群 1447 例中 613 例(42.4%)が死亡していた(調整後リスク比、1.02;95%信頼区間、0.94~1.11;P=0.64)。90 日目時点で,生命維持装置なしで患者が生存していた日数の割合や,退院後の生存日数の割合には,群間で有意な差は認められなかった.ショック、心筋虚血、虚血性脳卒中、腸管虚血を新たに発症した患者の割合は両群間で同程度であった(P=0.24)。

結論

ICU での低酸素血症の急性呼吸不全の成人患者において,酸素化の目標値を低くしても,目標値を高くした場合に比べて90 日後の死亡率は低下しなかった.

(デンマーク革新基金などより資金提供あり;HOT-ICU ClinicalTrials.gov番号、NCT03174002)