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オックスフォードとアストラゼネカによる新型コロナウイルスワクチンの有効率は70.4%(LANCET誌の報告)

2020年12月のNEJM誌に相次いで発表された、ファイザー社の新型コロナウイルスワクチン(BioNTechとファイザーによる新型コロナウイルスワクチンの詳細なデータがNEJM誌より発表)、モデルナ社の新型コロナウイルスワクチン(モデルナ社の新型コロナウイルスワクチンは94.1%の有効性)はいずれもmRNAワクチンであり、最新の技術を使って作成され、95%という驚異的な有効率を示しました。

 

今回紹介するオックスフォード大学とアストラゼネカ社が共同開発した新型コロナウイルスワクチンは、チンパンジーのアデノウイルスに新型コロナウイルスのスパイク蛋白をコードする遺伝子を組み込む技術を使用して作成されました。アデノウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)にして遺伝子をヒトの細胞に導入する技術は、今までのワクチンにも使われたことがあります。そのため、mRNAワクチンよりは安価に作成でき、冷蔵保存可能という違いがあります。

 

なお、2020/12/28 日本感染症学会が「COVID-19ワクチンに関する提言」を出していますので、こちらも参照してください。

 

拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちら。COPDはコロナが重症化しやすい基礎疾患です

 

まずは、同じLANCET誌に掲載されたKnoll氏とWonodi氏によるコメントから抜粋して翻訳します。

Oxford–AstraZeneca COVID-19 vaccine efficacy.

オックスフォードーアストラゼネカ社 COVID-19ワクチンの効能・効果

 

COMMENT| VOLUME 397, ISSUE 10269, P72-74, JANUARY 09, 2021

DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)32623-4

 

今回のThe Lancet誌に新しいワクチンの有効性が報告されている。英国、南アフリカ、ブラジルで実施された4つの無作為化比較試験の研究者が、18歳以上の成人を対象としたオックスフォード-アストラゼネカ社製のチンパンジーアデノウイルスベクターワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222)のCOVID-19に対する安全性と有効性の統合中間解析結果を発表した。低中所得国への世界的な供給、公平性、コミットメントを目指す非営利ワクチンとしてはCOVID-19に対する初めての有効性報告であり、その公表は歓迎されるものである。

⇨ファイザー社やモデルナ社は、3〜4万人の参加者を集めた大規模臨床試験を一つ行い、新型コロナワクチンの承認をとりました。しかし、アストラゼネカ社は3カ国で行った第Ⅰ〜第3相臨床試験を4つ統合し、参加者を合計約23,000人集めています。そのため、結果の解釈に分かりにくいところがあります。

 

「参加者は無作為に ChAdOx1 nCoV-19 ワクチンまたは対照(試験により髄膜炎球菌結合型ワクチン(MenACWY)または生理食塩水)のいずれかを受けた。」

⇨試験によっては、プラセボが生食ではなく、髄膜炎球菌ワクチンを投与しています。さらに、新型コロナワクチンの初回投与量が少ない試験があります(2回目の投与量はすべて同じ)。

 

4つの現在進行中試験のうち、英国とブラジルで行った2つの試験には、18~55歳(10,218例[87.8%])、白人(9,625例[82.7%])、女性(7,045例[60.5%])を主体とした11,636例が参加した。約4カ月以内の追跡調査で発生した症例に基づいて、入手可能であった有効性の中間解析結果が報告されている。ChAdOx1 nCoV-19 接種群では COVID-19 関連の入院は発生しなかったが,対照群では 10 件(うち 2 件は重症)のCOVID-19 関連の入院が発生した.2回目の接種後14日以上経過してから発生したCOVID-19という主要エンドポイントに対して事前設定の主要解析(両投与量群)を行ったところ、ワクチンの有効率は70.4%であった(95.8%CI 54.8~80.6;ChAdOx1 nCoV-19投与群 5,807人中30人[0.5%]、対照群5,829人中101人[1.7%])。」

⇨アストラゼネカ社のワクチンの有効率は70.4%でした。mRNAワクチンの有効率が95%だったので、やはり見劣りしてしまいます。でも、今まで我々が毎年受けているインフルエンザワクチンの有効率が 50%強であることを考えると、70%という数字は十分素晴らしいと思われます。

 ワクチン投与群で入院するようなCOVID−19患者がでなかったということは、ワクチンには重症化を防ぐ効果もあるのかもしれません(重症の症例数が少ないため確定的ではありません)。

「無症候性感染に対する有効性はLD/SD群で58.9%(1.0~82.9)と低かったが(SD/SD群では残念ながら3.8%(−72.4~46.3))、この結果はCOVID-19ワクチンが無症候性感染の一部を阻止することができるかもしれないという希望を与えている。」

⇨今回の報告では、症状のない一部の参加者にもPCR検査を行ってCOVID-19感染を調べています。しかし、症例数が少なく、このワクチンが無症状感染者も抑えることができるかは不明です。

 

「有効性を評価された患者のうち55歳以上の高齢者は1418人(12.1%)にとどまっており(LD/SDコホートは含まれていない)、これらの試験の中間解析からは、重度のCOVID-19転帰の最大のリスクを持つ高齢者における有効性を推測することはできないことを意味している。」

⇨試験参加者に高齢者が少なく、高齢者に対するこのワクチンの評価は困難です。

(LD/SDは一回目のワクチン量が少なく、2回目のワクチン量は標準量だったという意味です)

 

「重篤な有害事象は,ChAdOx1 nCoV-19 接種群 12,174 例と対照群 11,879 例で評価された。ChAdOx1 nCoV-19 群では、治療に関連した重篤な有害事象または死亡は発生しなかった。重篤な有害事象は175件(ChAdOx1 nCoV-19群84件、対照群91件)で、そのうち3件は介入に関連している可能性があった:ChAdOx1 nCoV-19ブースター接種から14日後に発生した横断性脊髄炎、対照群の溶血性貧血、群割り付けが明らかにされていない参加者の40℃以上の発熱である。・・・横断性脊髄炎の症例では、一時的に試験を中断する結果となり、参加者全員が回復したか、回復しつつある。」

⇨アストラゼネカ社のワクチンが一時中断になったことは日本でも報道されました。横断性脊髄炎は下半身麻痺を起こすような重い副反応であり、注意が必要でしょう。

 

「本試験の強みは、サンプル数が多いこと、ワクチン群への無作為化、異なる人種・民族を対象とした多様な施設を含めること、試験間の主要要素の標準化、ワクチン群間の参加者特性のバランス、安全性評価に全参加者を含めること、ブラジルではSD/SD群で英国と同様の結果が得られており、結果の信頼性を高めていることである。」

⇨異なる国、民族で調査できたことは意義があります。

 

「本試験の限界としては、参加者の4%未満が70歳以上の高齢者であること、55歳以上の参加者が混合投与レジメンを受けていないこと、併存疾患を有する参加者が少数派であること、そのサブグループの結果がまだ得られていないことなどが挙げられる。」

⇨第一相、第二相臨床試験の参加者が含まれており、参加者をかなり選んだ可能性があります。

 

90%以上の有効性が報告されている2種類のmRNAワクチンの高額なコストと比較して、オックスフォードーアストラゼネカがCOVAX施設と締結した1回あたり2~3米ドルという契約により、低中所得国は公平にワクチンを供給することが約束される。 ChAdOx1 nCoV-19ワクチンは、通常冷蔵による低温流通コールドチェーンを使用することができる。これは、超低温冷凍庫による保存が必要なmRNAワクチンが、多くの国や介護施設では準備できず実施できないことを考えると重要なことである。」

⇨通常の冷蔵庫で保存ができて、しかも安価であることは、全世界にワクチンを普及させる上で大きな意味があります。全世界に普及させなければ、新型コロナウイルスを根絶することができません。

 

「有効性は重要な考慮事項ですが、それだけではなく、運搬の実用性、地域社会での受け入れ、効果の持続性、ワクチンが感染や感染症だけでなく病気の伝播を減少させるかどうか、高リスク群での有効性、そしてもちろん安全性も重要な考慮事項です。これらのワクチンを提供する上での疑問や課題は山積していますが、これらの知見と、安全で効果的な3種類のCOVID-19ワクチンが存在し、さらに55種類のワクチンがすでに臨床試験中であることに興奮しないわけにはいきません。様々なメーカー、生産への非常に大きな世界的な投資、調達と流通の協力により、2021年にはCOVID-19ワクチンが世界のすべての国で利用できるようになると思われます。 おそらく来年の今頃には、SARS-CoV-2の世界的な制御を、私たちは実際に祝うことができるでしょう。」

⇨一年後、2021年の終わりには新型コロナウイルスをコントロールできるようになっていることを期待します。

 

 

Safety and efficacy of the ChAdOx1 nCoV-19 vaccine (AZD1222) against SARS-CoV-2: an interim analysis of four randomised controlled trials in Brazil, South Africa, and the UK

SARS-CoV-2に対するChAdOx1 nCoV-19ワクチン(AZD1222)の安全性と有効性:ブラジル、南アフリカ、英国における4つの無作為化比較試験の中間解析

 

DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)32661-1

ARTICLES| VOLUME 397, ISSUE 10269, P99-111, JANUARY 09, 2021

概要

背景

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する安全かつ有効性の高いワクチンは,もし高い集団接種率で展開されれば,COVID-19 パンデミックの制御に貢献する可能性がある.我々は,ChAdOx1 nCoV-19 ワクチンの安全性と有効性を,4 つの試験の統合中間解析で評価した.

 

方法

この解析には、英国、ブラジル、南アフリカで実施された4つの進行中の盲検無作為化比較試験のデータが含まれている。18歳以上の参加者は、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン群と対照群(髄膜炎球菌群A、C、W、Y 結合型ワクチンまたは生理食塩水)に無作為(1:1)に割り付けられた。ChAdOx1 nCoV-19群の参加者は、5×1010個のウイルス粒子を2回投与された(標準用量、SD/SDコホート);英国試験のサブセットでは、1回目の投与量が半量(低用量)、2回目の投与量が標準用量であった(LD/SDコホート)。2回目のワクチン接種後14日以上経過して、スワッブ検体がPCR検査陽性となった、抗体陰性の参加者において症候性COVID-19を主要有効性解析の対象とした。2020年11月4日をデータカットオフとし、参加者が受けた治療に応じて解析された。ワクチンの有効性は、年齢で調整したロバストポアソン回帰モデルから導き出された1-相対リスクとして計算された。研究はISRCTN89951424およびClinicalTrials.gov、NCT04324606、NCT04400838、NCT04444674に登録されている。

 

調査結果

2020年4月23日から11月4日までの間に、23,848人の参加者が登録され、11,636人(英国7548人、ブラジル4088人)が主要な有効性中間解析に含まれた。標準用量を2回接種した参加者では、ワクチンの有効性は62.1%(95%CI 41.0-75.7;ChAdOx1 nCoV-19群の4,440人中27人[0.6%] vs. 対照群の4,455人中71人[1.6%])であり、低用量接種後に標準用量を接種した参加者では、有効性は90.0%であった(67.4-97.0;1,367人中3人[0.2%] vs. 1,374人中30人[2.2%]、交互作用のp=0.010)。両者にわたるワクチン全体の有効率は70.4%であった(95.8% CI 54.8-80.6;5,807人中の30人[0.5%] vs. 5,829人中の101人[1.7%])。初回投与後21日目からCOVID-19で入院した症例は10例で、すべて対照群であった;2例は重症COVID-19に分類され、そのうち1例は死亡であった。安全性の追跡調査は74,341人月(中央値3.4カ月、IQR 1.3-4.8)で行われ、重篤な有害事象は168人に175件発生し、ChAdOx1 nCoV-19群では84件、対照群では91件であった。3件の事象がワクチンに関連する可能性があると分類された:ChAdOx1 nCoV-19群で1件、対照群で1件、群の割り付けが明らかにされていない参加者で1件であった。

 

解釈

ChAdOx1 nCoV-19は、現在進行中の臨床試験の中間解析において、許容可能な安全性プロファイルを有し、症候性COVID-19に対して有効であることが確認された。

資金提供

英国研究&イノベーション、国立衛生研究所(NIHR)、疫病対策イノベーション連合、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、レマン財団、レッドドール財団、ブラバ&テレス財団、NIHRオックスフォード生物医学研究センター、テムズバレー&サウスミッドランドのNIHR臨床研究ネットワーク、アストラゼネカ。